異世界は案外厳しいようです。(後半)
金元司は今、王城の図書館に来て調べ物をしていた。
国王曰く3日後までは王城を好きに歩き回っていいとのことなので、せっかくならこの世界のことを知ろうと考え、図書館に来ている。
流石王城の図書館なだけあってとても様々な種類の本が置かれており、僕の目当てだった"この世界について"の本も容易く見つかった。
「ふむ、この世界はあれだな、ラノベでよく見る勇者tueeeee物語の世界だな」
などと、この世界の住人には到底理解できない独り言を呟きつつ、本を読み進めていくと面白いことが分かった。
なんとこの世界の地図は日本とあまりにも酷似していたのだ。
この国が大体東京の辺りだとすると、魔王軍は北海道から攻めてきており、大体福島県の辺りで戦争が行われているようだ。
「なんだ、案外攻め込まれてないじゃん(笑)」
などと呟いていると、僕が座っていたテーブルの向かい側の席に第一王位継承権の持ち主アネッサが座り、僕に問いかけてきた。
「アナタ、3日後には帰るのよ?この世界について学んでもなんの意味もないでしょう?」
と煽るように聞いてきたのだ。
これには流石の僕も驚いた。
なぜならこれまで、この国の王位継承権第一位の座に座るのが頷けるような立ち居振る舞いをしていたのに、僕が勇者候補ではなく、一般人だと分かるとなるとこれなのだ。
まぁ、これも仕方ないことなのだろう。
この国を救うかもしれない勇者と、その辺の一般人とで対応を同じにする方が問題になるのだから。
だが、ここで僕は少し王女を挑発してみたくなってしまったのだ。
どうせ3日後には二度と会わない相手なのだ。少しイジっても許されるだろう。
「へぇ、君ってそんな態度取る王女サマだったんだ?ちょっとショックダナ~(棒)」
「なにをッッ!アナタねぇ、パパに王城の自由を許されてるからって、第一王位継承権を持つ私に向かって挑発する行為は許されてないんだからねッッ?」
「でも、結局継承権があるだけで、王でもないし、権限もないんでしょ?(笑)」
「アナタね"ぇ"…」
案外王女をイジるのも楽しいものだ。
勝手に召喚されて勝手に送り返されるのだからこれぐらいの戯れは許されるだろう。
「もういいわッッ!アナタとはここで絶交よ!3日後に勝手に帰るが良いわッ!」
あまりにも大きな声で啖呵を切るものだから、カウンターで静かに本を読んでいた司書に怒鳴られるかと怯えたが、どうやらそこは王女様権限で許されるらしい。
アネッサは敢えて僕に聞こえる音量でぶつぶつ呪いのような言葉を呟いていたが、僕は聞こえてないフリをして読書を再開する。
それからの3日はあっという間だった。
誰にも騒がれない場所で静かに本を読み、朝昼晩は豪華な食事を食べられるのだ。本心ではもう少しここに居たい気持ちもあったのだが、そんなこと言える訳がない。
さぁ、日本へ帰るとしよう。
3日目の朝、僕は執事に連れられて転移室へと来た。
部屋の名前が"転移室"なだけあって部屋の作りはシンプルで、下にはびっしりと書き刻まれた呪文が円になって連なっている。
どうやらこの円の中心に行き、「転移!」と叫べば転移できるらしい。
魔法とはなんとも便利なものだ、日本に帰ったら3日間で詰め込んだ魔法基礎学で親友にちょっとした自慢をしてやろうと考えながら円の中央まで歩いたその時、突然足元が輝き出したのだ!
「な、僕はまだ転移なんて言ってないぞ!?」
と言うが周りの魔術師達は困惑して使い物にならない。これで日本に帰れるならそれでいいんだが、どうにも嫌な予感がする。そう思った矢先、僕の予感は命中した。
「キャアァァァァ!」
転移室のドア付近から女性の甲高い叫び声が聞こえた。
ほら、やっぱり。
で、誰が叫んでるんだ?などと自分が発光しているのに呑気なことを考えていると、女性の声が今度は叫び声ではなく、文章になって聞こえてきた。
「なッ、なにこれぇ、足が、私の足が光ってるぅぅぅ!」
あっこれテンプレのやつじゃん。と直感で感じた。
その瞬間、僕の足元の光が目を焼き尽くすぐらいに光り輝き、そこから僕の意識は失われてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます