第1章 〜初めての日本〜
(1) 日本(自宅)への帰還は王女と共に
朝だ。
目の前に柔らかい抱き枕とも言えないような柔らかいナニかがあること以外普通のいつもと変わらない朝だ。
「え?」
そう、高校一年生の僕、金元司は昨日まで3日間の異世界生活を送っていたのだ。
そして、いざ帰るその瞬間、なんらかの問題が起き、僕の足元が突然輝き出し、転移が強制的に行われた。そう、ここまではかろうじて覚えているのだ。
だが、今目の前にあり、その柔らかいナニかに包まれているこの現状だけは何かわからない。
とりあえずこのまま顔を埋めていたい気持ちをなんとか堪えて、身体を起き上がらせる。
無理な姿勢で寝ていたのか、身体の節々が悲鳴を上げている
「ッッッ」
声にもならないような苦悶の声を出しながら痛みに悶える。
だが、その痛みすら気にならないような絶望が僕に襲い掛かってきた。
そう、僕が顔を埋めていたのは王女様のたわわだったのだ…………
僕はまず最悪のパターンその1-王女が今まさに起き、僕がしでかした所業に気付いた挙句、パパに報告されるパターンだ。
だが、これに関しては数十秒考えた結果、大丈夫という結論に至った。
何故ならば、今彼女は僕のベットの上で熟睡しているからだ。それに、ここは異世界ではなく日本である。
あの美丈夫のパパがやって来ることは無い…多分。
そしてちょっと最悪なパターンその2-今まさに僕の部屋には王女が居るが、この部屋の有り様を親に見られたら間違いなく僕は死ぬだろう。
良くて24時間正座耐久だ…
僕はまずパターン2の可能性を限りなく減らすため、彼女を起こし、この部屋から移動させることにした。
「お~い、起きろ~、朝だぞ?」
「んぅゥ、うぇ?朝…?」
ゆっくりと起き上がる王女にニコリと笑いかけながら「おはよう」の挨拶を僕が一方的にし、その直後に彼女の口を塞いだ!。
どうやら僕の勘は冴えているらしい。
彼女は叫ぼうとしたが、僕の左手によってそれを塞がれ、声にもならない唸り声をあげていた。
「おい、いいか?僕は君を襲うつもりは一切ない、信じられないかもしれないが、とりあえず静かにしてくれないか?」
彼女の返事はNoだった。
僕が「襲わない」というワードを発した瞬間に僕の左手に噛みつこうとしてきたのだ!
「ちょ、やめ、痛い!いたいって!ごめん、もう塞がないからッッ!」
僕の左手が彼女の口から外されると、彼女は大きな声で助けを求めた。
「誰か~!助けて~!リサ!アカネ!シュバルツ!どこに居るのッッ?」
もう僕は吹っ切れた。
どうせ正座24時間耐久コースなんだと思えばもうコイツなんか怖くない。
「あー、お前がそうやって王城の関係者に助けを求めてるところ悪いんだが、ここ日本なんだわ」
それまで僕のことを見向きもせず声を張り上げて助けを求めていたアネッサが、こちらを振り向く。
「ニ…ホン?」
「あぁ、日本。お前らは僕のことを異世界人と呼んでいるが、ここは異世界人の国(星)だ」
「歓迎するよアネッサ、ようこそ日本へ」
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