日本へと送り返された元勇者候補、転移魔法の手違いで王女と共に帰還する。
カリッと
プロローグ
異世界は案外厳しいようです。(前半)
何故僕がこんな"THE"王城的なところに…?
それが、僕が異世界に召喚されて初めに感じた率直な感想だ。
「勇者候補の召喚に成功しましたッ!」
思わず耳を塞ぎたくなるような大声と共に、赤色のローブを被った大人達がせかせかと走り回る。
「ここは…どこ…?」
これは異世界に召喚された日本人がまず初めに言うセリフNo.1だろうと思いつつも、素直な感想が口から溢れる。
「ようこそおいでくださいました勇者候補様。我が国シュケイツをどうかお救いくださいませ。」
そう僕へ突然語りかけてきたのは、豪奢で真っ赤なドレスに身を包んだ、鮮やかな金髪が特徴の美女だった。
「私はこの国の第一王位継承権を持つ国王ナシュベルの娘アネッサです。」
「勇者候補様のお名前は失礼ながらそこの鑑定士に見てもらい把握しています。金元様、どうぞこちらへ」
そう言われ、僕はまるで夢でも見ているような気分で王女について行くしかなかった。
連れて行かれた場所はレッドカーペットがふんだんに敷き詰められた床に、一段段差があり、その段差の上に、これまた豪奢な椅子が一つ置かれている場所だった。
未だに状況をうまく飲み込めずに居る僕でも、この空間の名前はなんとなくわかる。
そう、王座の間だ。
そして、その豪奢な椅子に座る美丈夫なイケオジこそこの国の王、ナシュベルなのだと分かった。
「よくぞ参った、第三勇者候補、金元司よ。我が名はナシュベル、この国の王をやっている」
とても良く通る声であり、尚且つどこか聞き覚えがあるような…圧倒的なカリスマ性を感じずには居られない声に、僕は思わず息を呑んだ。
「まず其方には謝罪をさせてほしい」
「其方の了承を得ずに召喚してしまったこと、そして……………………また送り返すことになってしまうことについて」
僕は訳が分からなくなった。
僕が異世界に召喚されたところまでは僕もかろうじて理解できた。何故なら僕は重度のラノベ愛好家であり、このような事態はある程度のテンプレとして知っているからだ。
だが、送り返す…?こんな世界に連れてきておいて?
僕は怒りを通り越してもはや呆れてしまった。そしてもうどうにでもなれ!という思いで国王の謝罪を受け入れ。何故僕が送り返されるのかを尋ねることにした。
「あぁ、送り返される理由が知りたいのか…そうか。まぁ当然の疑問じゃな。理由は明確、すていたすが其方は他の勇者候補と比べて目に見えて貧弱すぎるのだ」
「ステータス?」
「王国随一の鑑定士に見てもらったからミスはないと思うが…頭の中で"すていたすおーぷん"と唱えてみよ」
国王に言われるがままに僕は頭の中で"ステータスオープン"と唱えた。
すると、僕の目の前に青白い光を放つ石板のようなものが現れたのだ。
「うおッッ!」
突然現れた青白い石板に驚きつつも、僕はその石板に書かれている情報に目を通した。
名前:金元司
HP=500
MP=450
STR=C
ATK=B
VIT=C
DEF=D
INT=A
AGI=B
LUK=E
LV-1
と書かれていた。
「それが其方の"すていたす"だ」
なんとなく予想していたが、僕はここが本物の異世界なのだと改めて実感した。
「そなたの"すていたす"は、はっきり言って中の下、この世界で勇者をやっていくにはありえない数値だ」
「なるほど…だから僕を元の世界に返すんですね?」
「おおぉ、飲み込みが早くて助かる。そうじゃ、其方にこの世界はちと厳しいと思ってな。本当にすまないとは思っているが、元の世界に帰ってもらうのが一番良いだろうと考えてな。」
なんとも呆れたものだ。勝手に召喚しておいてステータスが貧弱だから帰れ?人を舐めるのも大概にしてほしいものだ。
だが、ここで僕が何を言おうと結果は変わらない。大人しく従うことにしよう。
「分かりました。で、僕はいつ頃返されるのでしょうか?」
「予定では3日後の朝を予定しておる。その間、城で寛いでもらって構わない。」
「重ねて言うが、すまないとは思っている。どうか元の世界に帰った後も平和に暮らしてほしい」
この王の発言の後、玉座の間に新しい客人が来たらしく、その場でお開きとなった。
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