4話② ブラコン?(※別キャラ視点)
私の名前は星野葵。髪にメッシュを入れていること以外はいたって普通の女子だ。
さて、そんな私が高校に入学してからちょうど三週間が経過し、私にも友人ができた。
友人の名前は柏木恵梨香。エリカちゃんは私と同じ1年A組のクラスメイトだ。
第一印象はあの子可愛いなぁ、とかそんな感じだったと思う。
ただ、教室ではいつも気だるそうな雰囲気だし、休み時間は常にスマホをいじっているから周りに人が寄ってくることはなかった。
加えて、自ら誰かにコミュニケーションを取りに行くこともしていなかったので彼女が誰かと話しているところは見たことがなかった。
そんな様子だったので、私は意識はしていても話したことは全くなかった。
転機となったのはある日。授業の中で一緒のグループになった。
正直に言うと少し緊張したし、怖い子だったらどうしよう、とか思っていた。
けれど、いざグループワークとなると率先してグループをまとめてくれたし、メンバーにタスクを分配してくれてうまく活動できた。
それ以来、私は彼女に対してとても興味を持った。休み時間の度に彼女の席まで話しかけに行った。最初は正直迷惑がられていたと思う。けれど、次第に彼女の方から私に声をかけてくれるようになった。
その時はとても嬉しかった。
彼女と話すうちに色々なことを知りました。笑うととても可愛いこと、ゲームの動画を見るのが好きなこと、私服のセンスが良いこと。
そして――――
「でね、いっつもゲームしているし、昨日だって23時くらいまでゲームしててさ、みんなもう寝るっていうのにお風呂入ってたの」
「へえ、そうなんだ」
――多分、ブラコンなこと。
雑談していると必ず出てくる気がする。
でも、エリカちゃん本人はそんな自覚ないみたいだし、お兄さんと仲いいの?とか聞いても「うーん、別に普通。好きでも嫌いでもない」としか言わない。
それは嘘、絶対好きじゃんこれ。
私は一人っ子だから詳しいことは分からないけれど、この年の兄弟とか姉妹って仲良くないことの方が多い気がする。
確かに兄妹で仲が良いことは良いことだと思う。
「お兄さん、ゲーム好きなんだ。どんなゲームしてるの?」
「えっと、ダンジョン・モンスターズ・オンラインっていうゲーム。BBギアっていうの被ってやるゲーム」
「え、D・M・O!?」
「知ってるの?」
「もちろん。ゲーム好きだからね。まあ、高くて買えないからプレイしたことないけど」
BBギアは定価で約四十万円する。毎年両親や親戚から貰っているお年玉を貯金しているが、購入するにはあと二十万円程足りない。そのためアルバイトをするつもりだが、それでもあと半年はかかりそう。
「おお、なんという偶然」
エリカちゃんが少し苦笑いする。
「偶然? 何が?」
「実はね、なんやかんやで家に今日BBギアが届くんだよね。でも、お兄ちゃんはもう持ってるし、私も使わないからどうしようかなーって思っていたの」
「……それってつまり、そういうこと?」
「うん。ギア貰ってくれない?」
「い、いやいやいや! さすがに受け取れないって! あれめちゃくちゃ高いじゃん!」
ていうかなんやかんやって何!? そんな簡単に手に入るの!?
「あはは、別に気にしないでいいのに」
流石に気にする。チョコレートとかだったら喜んで受け取るけど、さすがにそんな高価なものは受け取れない。受け取ったら関係性が友達じゃなくなってしまう気がするし。
「うーん。あ、じゃあさ。あくまで私が葵に貸しておくってことにしておいちゃ駄目? 私が必要になるまで。それなら貰うってわけじゃないし」
正直に言うと欲しい。それに、そこまで言われたら断るのも申し訳ない気がする。
「わかった。でも、バイト沢山してお金がたまったら自分で買うから! そうじゃなくても、ちゃんと言われたら返すから!」
「うん、ありがとう。それじゃあウチくる? 家にお兄ちゃんいるから分からないこと訊けるし」
「え、今日!? い、行く!」
エリカちゃんの家か。
お兄さん。確か幸成さんって言ったっけ。
私の知っていることは同じ高校の一個上の先輩だということ。それと――
勉強あんまりしないでゲームばかりしていること、テストではいつも平均点くらいの点数を取っていること、数学が苦手で英語が得意ということ、運動神経はいたって平均的だということ、ぱっと見の印象は好青年だけど色々残念だということ、よく部屋の電気をつけっぱなしにすること、私服が少しダサいこと。
――なんであったことないのにこんなに知っているんだろう。
まあ、全部エリカちゃんから聞いたことなんだけど。
「着いたよ。ここ。意外と高校から近いでしょ」
目の前にあるのは二階建ての一軒家。
エリカちゃんのお兄さんどんな人なんだろう。ちょっとだけ緊張する。
でも、なんとなくきっといい人だと思う。
一緒にD・M・Oの話をしたりして仲良くできたらいいな。
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