3話② 秘密(※別キャラ視点)

 D・M・Oのベータテストが開始したとき、私は女のアバターで参加した。


 当時の私は年齢の近い人とか、ゲームが好きな人とかと一緒に遊べたらいいな、とか考えていたと思う。


 しかし、なかなか上手くいかなかった。

 町を少し歩けば「一緒にパーティ組まない?」とか「何か困ったことない?」とか男性プレイヤーにしつこく話しかけられる。別に男性自体が嫌いというわけではなかったけど嫌いになりそうだった。彼らの目的がゲームを楽しむことではなく、ナンパすることだったことはただ悲しかった。

 

 ネカマもいたっけ。同い年の女の子のフリをしてセクハラしたり、執拗にボディタッチしたりしてくる。こっちからすれば男だということはバレバレだというのに。そういうことがしたいならR18の別ゲームをすればいい。

 

 うんざりだった。純粋にゲームを楽しみたいのにこんなことで満足に楽しめないなんておかしいと思った。


 そこで、製品版ではどうしようかと考えた。

 まず初めに顔を醜く作ろうとした。

 しかし、それはそれでパーティ作成で支障が出そうなので思いとどまった。


 最終的に、男性アバターでプレイしようと考えた。筋骨隆々なのは嫌だから中性的で美しいエルフの少年に。


 そうして僕は、プレイヤー【ノエル】は誕生した。

  

————————


 入浴しながら自分の身体を観察する。

 男の子の身体とは全然違うなとか胸が邪魔だなとか当然のことを考えた。


 最近、リアルでも一人称が僕になりそうなときがある。毎日三時間以上男を装っている弊害だ。

 

「はあ、どうしよう」

 今日、ユキに一緒に秋葉原に行かないか誘われて、断ったことを少しだけ後悔している。


 同じ東京に住んでいる高校生という点では本当だし、半年以上一緒に遊んでいても全然嫌な気がしない。とても楽しい。だから、きっとリアルでもいい友達になれると思う。


 もし会ったらどんな顔をするだろう。

 例えば「え、女だったの!?」って目を丸くしたりして、事情を聞いたら笑ってくれるのかな。

 それとも、「俺を騙したのか!」と怒るのかな。


 1.4が配信されるまで。

 なんとなく、次のバージョンアップが来る前に言おう。

 このままずっと黙っているのも良くない気がする。

 ユキも宝くじ当たったことを教えてくれたのだから。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る