第18話 溶岩の谷に架かる橋
「ぱぴぃ、ムリ! このトカゲ
いちばん期待していたティスが真っ先に
「お父様、このドラゴン、前のやつより強いです!」
セバス3が苦し
いや、実際に前回は勝てた。セバス3があの魔法、スパチャ
今もセバス3は、魔法を使うタイミングを
「ん? 魔力を吸収?」
俺はそこでぴんときた。うまくいけばすべての問題が一発で解決するかもしれない。
「セバス、魔力を吸収したら使うのちょっと待って」
「どういうことですか、お父様?」
「その魔力、俺が使うから」
「? わかりませんがわかりました」
ちょうど、である。ドラゴンが胸を大きく膨らませる。真っ赤だ。溶岩のように、赤く赤く、光を輝かせ、そして、ふつふつと口の中に火を
チャンス!
だけど、これは同時にすっごい危険なのでは?
「ティス、ライリー、セバスの近くに!」
間一髪。俺達がセバス3の方に走ったというより、セバス3によってかき集められたわけだが、なんとか間に合った。おそらく。間に合っていてほしい。そうでないと、今まさに解き放った大火炎弾が俺達を焼き尽くすだろう。
「やばいやばいやばいやばい!!!!」
俺が叫んでいる最中、セバス3は冷静に襟を正し、こほんと咳払いした。
「お便りいただきました」
火炎弾がパッと消える。そしてぽんと現れたのは一通の手紙。セバス3は手紙を手に取り、開いて、読み始めた。
「目からウ〇コさん、ありがとうございます。
~初めてスパチャします。十年乗った車を買い替えようと思っているのですが、嫁がレンタカーでもいいのではないかと言っています。私は車が好きなので絶対に買い換えたいのですが、どうすれば嫁を説得できるかアドバイスをお願いします~
私も車は好きですよ。あなたの気持ちは――
「ちょっと、何をぶつぶつ言っているんですの、このたいへんなときに!」
何も知らないライリーが文句をつけようとしたのを、あわてて俺は彼女をぐいと捕まえて止める。
「何するんですの!」
「あれはいいの! そういう魔法だから」
「手紙読んでるだけじゃないですか!」
「そうだけど。あれだよ、呪文なんだよ」
「そんな魔法ありますか!」
「あるの! いいから君は君のやることをやって」
「むぅ。わかりましたわ。というか、いつまで私に抱き着いているんですの? こんなところで発情しないでくださる?」
してないやい。
ティス、まじで発情してないから、鎌をライリーに向けないで。
「それより、ライリー。魔力受け渡しの準備はできている?」
「術師間魔力伝送術式の準備は万全ですわ。たぶんこれでうまくいきます。失敗しても爆発するくらいです」
「おっけ。じゃ、さっそく。って、爆発?」
「えぇ。魔力を送り過ぎてしまって、オーバーフローしたら当然爆発するでしょうね」
「なっ、何で今言うの!? 最初に言ってよ!」
「聞かれませんでしたので」
「絶対、俺、爆発するじゃん」
「安心してください。私は最年少の新米S級魔術師ですよ。絶対に成功します」
「若葉マークじゃん! しかも丘サーファーじゃん! どこに安心を覚えればいいの?」
「失礼な! この私がやるんですよ!」
「知らねぇよ!」
計画倒れだった。やっぱり魔力はドラゴンを倒す方に使ってもらおう。溶岩の谷を渡る方法はなくなってしまうが、それはまた考えればいい。
俺がセバス3にその旨を伝えようとしたところ、
「それじゃ、術式展開しますわよ!」
「え?」
どうやら術式が展開された。
魔法陣が地上に浮かび上がる。俺達が使う魔法よりもよっぽど魔法らしい。いや、魔術なのだろうか。その区別はわかりかねるが。
「巻き角執事から黒髪の悪魔に魔力を転送!」
「嫌だぁ! 爆発するぅ!」
本当にライリーなんて拾わなければよかった。あのまま湖に捨てておけば、こんな危ない橋を渡ることもなかったのだ。あれが分岐点だった。
あー、久しぶりに言うよ。
死んだ。
死にました。
まぁ、死ぬ前にやれるだけのことはやりますけどね。
ライリーと俺とセバス3が術式でつながる。その感覚はあった。パイプのようなもので接続され、その中を魔力が流れてくる。流れ込んでくる。
この魔力の量が俺のキャパを越えたら爆発する。ならば、超える前に使い切ってしまうしかない。俺はタイミングを見計らって、作成した橋のモデルのレンダリングを開始した。
魔力が身体の中を駆け
レンダリングにやけに時間がかかる。そりゃそうか。規模が規模だ。
その時間を待ってくれるわけもなく、ドラゴンが攻撃してくる。学習したのか、火炎弾ではなく、爪による攻撃。
セバス3は辛そうだ。魔力を俺に受け渡しているからだろう。おそらくライリーに調整というものはできない。根こそぎセバス3から
「ティス!」
「任せてぇ!」
爪を鎌で受け止める。足場が砕ける。しかし、ティスは
その瞬間、進捗率が100%になる。すかさず視線を出現先へ。溶岩の谷に緑の光が集まっていく。凝縮して、定着する、この世界に。
橋。
無骨ではあるが、それはまさしく橋だ。こちらの岸から向こうの岸へと続く道。正直、向こう岸まで届くかどうか不安だったが、落ちないということは届いたのだろう。
俺はがくっと膝をついておきながらも叫んだ。
「橋を渡れ!」
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