第13話 王女降臨! ちょっとうるさいんですが
「私のことを知らないですって?
落ち人、いや、ライリー王女は、びしょ濡れになって重そうなドレスをがんばって振りはためかせながら、
ただ、あまり感謝はされなかった。
「ねぇ、ぱぴぃ、こいつむかつくんだけど。天に
「こら、ティス。すぐ天に召そうとするのやめなさい」
ライリーの上から目線に、ティスがずいぶんご立腹だ。目を離すとライリーの身体が二つに分割されかねない。
俺は、なんとか
ライリーは美少女であった。濡れた髪をさっとかきあげた仕草などは大人な色気を
あ、いや、美少女だから死なせないようにってわけじゃないよ。あれだよ、人道的にだよ。
「何をじろじろ見ているんですの? いやらしい」
「いや、えっちなことなんて考えてないよ。ほら、こんな子供を奈落に堕とすなんてひどいことするなって」
「子供じゃありません。この間、14になりました。もう大人です。そもそもあなたの方こそ子供じゃないですか」
「俺が?」
何言ってんだ?
俺は今年で30歳のおっさんだぞ。子供に見えるような顔立ちでもないし、目がわるいのだろうか。しかし、違和感が後を追ってくる。そういえば、この世界に来てから身体の調子がいいんだよな。なんか、肌も若々しいというか。
その違和感の答えを探して、俺は湖を覗き込む。するとそこには十代の頃の幼い自分の顔があった。
若返っている!?
え? 何? そういう仕様なの? もう、異世界召喚わけわからな過ぎるよ。一回、誰か説明して。
「どうしたんですの? 頭がおかしくなったんですか?」
「いや、自分の若さを確認しようと思って。若いっていいね」
「どこの国の言葉でしゃべっているんですの?」
あ、言語レベルで話が通じてないと思われている。こういうところにコミュ力が出るよな。気を付けよう。
「で、さ。王女様なのはわかったんだけどさ、何で王女様が落ちてきたの?」
「うっ!」
ライリーは目を逸らし、あきらかに口ごもった。そこで俺は一つの仮説を思いつく。
「あのぉ、王女って何か証明できるものある?」
「は?」
「いや、俺達、王女のこと知らないからさ。もしかしたら、あんたが王女を
「な! 無礼者! 私は正真正銘、王女です!」
「だから、それを証明してほしいんだけど」
「私が私である以上に証明などありますか!」
「そんなの誰でも言えるじゃん。ほら、マイナンバーカードとかないの?」
「まい、なんですか? さっきから意味のわからないことを。いいでしょう。この紋章を見なさい」
ライリーは、ぐいと服の胸元を引っ張って、その内側の肌を見せた。正確には肌の上に光る
「これこそ王家にのみ与えられたアルメネスの紋章。さぁ、わかりましたか。わかったら
「いや、それが本物かわからんし」
「何ですと!?」
おおげさに驚くけれど、普通わからなくない? 俺がわからんのは仕方ないとして、国民であったとしても王家の肌にある紋章なんてわからんでしょうに。
「ティス、どう思う?」
「え? タトゥーかっこいいって思う」
「そっか。話聞いてなかったんだな」
俺は、ライリーの方を向き直り、話を進めた。
「で、王女だってことは信じたとして、どうして奈落に落ちてきたの?」
「……。第一王子のくそ虫に
「あー、跡継ぎ争いで負けたのね」
「負けてませんわ! 私はまだ生きてますもの!」
「奈落に落ちた時点で似たようなものじゃない?」
「くっ! まさかべべブルの大穴に落とされるとは思いませんでしたわ。私でも第二王子は殺さず辺境に送るくらいでしたのに」
「あ、似たようなことしてたんだね」
「そもそも悪魔召喚の容疑って何ですの? いったいどこの誰が悪魔なんて召喚したのか存じませんが、とんだ迷惑ですわ!」
あれ? それって俺のことかしら?
「まぁ、私もその容疑をミラ第二王女にかけて失脚させようとしていたのですが」
「素直に同情させてくれないよね、さっきから」
「まさか計画を逆用させるとは思いませんでしたわ」
「湖で
俺が呆れていると、ライリーは、こほんと咳払いをして腰に手を当てにやりと笑った。
「しかし、あのくそ虫も詰めがあまいですわ。
そしてライリーは俺に視線を向ける。
「さぁ、貴様達。このルシフェル大迷宮を攻略し、私を地上に戻しなさい。安心していいわ、私がアルメネス王になった
なんか知らない単語がたくさん出てくるんで、俺もついていけないんだけど、とりあえず返事だけしておいた。
「めんどうなので嫌」
「な、なななななな、何ですとぉ!?」
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