第6話 ドラゴン襲来! 展開早くない?
「なぁ、セバスさん、セバスさん」
「どうしましたか、お父様」
「毎日、兎肉で
「申し訳ございません、お父様。この辺りで狩りやすいのがあの兎でして」
「そうだよね。いや、いつも
「兎でないとすると、
「ワームかー。あれはまずかったなー」
「まずかったですね」
二人して顔を青くしながら、俺は皿の上の兎肉にナイフを入れた。
モデリングの魔法を使えるようになってから、いろんなものを創り出した。食器やフォーク、ナイフ、鍋。とりあえず生活に使えそうなものから試していった。その度にぶっ倒れたのだが、さすがに慣れて、近頃では気を失うことはなくなった。
テーブルや棚などはゴミ山から拾ってきて修理して使った。モデリングで出してもよかったのだが、普通に作れるものは作った方がいいと判断した。疲れるからね。
というかんじで生活用品を
飯の方もセバス3の活躍によって困っていない。兎狩りに関しては慣れっこだ。初めは俺も一緒についてまわっていたのだが、邪魔だということに自ら気づき、ただ彼の帰宅を待つだけとなっている。
これじゃ、自宅警備員だな。
いや、自宅っていうほどの家はないんだけど。
「ここに家を建てようか」
「建築の
「いや、ないけど。モデリングでばばーんと」
「それは、相当な魔力が必要ですね」
「だよな。まだまだ魔力を増やさないと。まぁ、気長にやろうかな。セバスが強いからここいらの魔獣は近寄って来ないし。わりと安全だからさ」
「油断はいけませんよ、お父様。この地下空間には私よりも強い魔力を持つ魔物が大勢います」
「え? そうなの? じゃ、やばいじゃん。襲われちゃうじゃん」
「いえ、私より強いといっても少しなので。ただ食事をするだけならば、もっと弱い獲物を狙います。怪我したくないですからね」
「そりゃそうだな。バトルマニアじゃあるまいし」
「まぁ、なわばりに入ってきたら話は別ですが。このあたりをなわばりにしていた魔獣は私が排除しましたのでその心配もありません。でも、油断はいけません」
「了解」
油断しようがしまいが、セバス3より強い魔獣に
「しかし家を建てようとは唐突ですね」
「あー、もうずっとここにいてもいいかなって思って。地上に出たいなって気持ちも最初はあったんだけど、わりと充実してきたし。セバスはどう思う?」
「私は、お父様と一緒であればどこでもいいですよ」
さいですか。
「まずはもっと生活レベルをあげないとな。セバスは何かほしいものとかある?」
「そうですね、ティーカップなどがあるといいですね。ティータイムは人生を豊かにします」
「おーいいね。執事っぽい」
まぁ、お茶っ葉がないけどね。
なんて話をしながら飯を食って、ときおりティータイムなどができたら、もう充分なのではなかろうか。と、俺は平穏を感じていた。それがいけなかったのかもしれない。
先に気づいたのはセバス3であった。遅れて俺も気づく。いや、俺でも気づいた。その異様な魔力に。
次の瞬間、俺の視界は反転する。セバス3に
何か、燃えてる?
「お父様! お怪我はありませんか?」
「いや、ないけど、燃えてない?」
「はい。火炎放射の攻撃を受けたようです」
「火炎放射!?」
こんな地下深くの森の中で? 誰に? 原住民族がいたとか? それで火矢を撃たれたとか? だから何でいきなり攻撃してくるの? まずは話し合おうよ!
「いえ、攻撃してきたのは人ではありません、あれです」
俺の泣き言を受けて、セバス3は空を見上げる。そこには緑の光と黒い影。翼を大きく開いた影は、長い尻尾をうねらせながら、こちらを見下ろしていた。
「ドラゴンです」
「ドドドドドド、ドラゴン!?」
どのファンタジー作品でもラスボス級として登場する生物、ドラゴン。そんなラスボス級が、やっと生活になじんできたようなレベル1の俺達を狩りにやってきた。
ほんと、何で?
平穏の神様に、親の
拝啓、神々の皆様方、どうか俺のことはほっといてください。
いやいや、どこぞの神様に
当のセバス3は、額にうっすらと汗をにじませ、見たことない表情を浮かべていた。
「セバスさんや。あのー、ドラゴンも倒せたりする?」
「残念ながら私には倒せません。強過ぎます」
「え、あ、そう? いや、いいよいいよ。セバスさんって戦闘のプロってわけじゃないもんね。で、さ、だとすると、だけどさ、今って、かなりやばい状況?」
「はい、たいへん危険な状況です!」
……。
…………。
どうやら唐突に往生際のようです。
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