第121話 ファフニール討伐配信3
「ボスは地上! ちくわちゃんお願い!」
ねこまがそう叫ぶと同時に、ちくわがファフニールへと距離を詰めて双剣を振りかぶる。
「ガッ……グガァァァッ!」
金属同士がぶつかるような音を立てて刃が鱗を掠っていく。遺物装備でなおかつ最終強化まで進んでいるというのに、ファフニールの堅い竜鱗は刃筋を立てることすら拒んでいた。
「ガアアァァッ!!」
爆発音のような咆哮とともに、ファフニールの口から炎があふれ出す。それを確認して、俺はマンダの支援スキルを発動させる。
「っ……」
ちくわは炎に巻き込まれるが、その炎は肌を焼くことはなく、そして彼女を害することすら不可能だった。
ステータス強化<体>は、体の丈夫さを引き上げる支援スキルで、実際に硬化や防護の支援魔法と同等の能力を持っていた。
「ディヴァインサンダー!」
炎のブレスが不発に終わったことで発生した隙に、ねこまが雷属性の魔法を打ち込む。雷属性は命中率と運動阻害の効果が特徴で、電撃を受けたファフニールは、大きな隙をさらす。
「うおおぉっ!!」
このタイミングなら、射程の短い東条君の両手剣での攻撃も安全に命中させることができるだろう。彼は剣を肩に担いで大きく吼えると、全体重を乗せてファフニールの翼めがけて振り下ろす。
「ガアアアァァッ!?」
金属が割れるような音とともに、東条君の両手剣が翼の根元にぶつかる。刃筋を立てることはできないが、単純な打撃としてみれば、大質量の棒で殴られたようなもので、ダメージはゼロとは言えないだろう。
「グゥゥ……」
東条君の攻撃に、ファフニールは攻撃の対象を彼に変更しようとするが、それをちくわが許さない。
「はぁっ!」
鱗に覆われた部位には攻撃が通りにくいが、粘膜がむき出しとなっている場所——例えば目や口、神経が密集している場所、爪先などは、生物的に攻撃が絶対に通ってしまう。彼女はそれを狙って切っ先を突き込む。
「グゥッ……」
だが、その弱点はファフニール自身も把握している。首を振って狙いをずらすと、東条君へ向いていたヘイトは改めてちくわへと向かう。
「気をつけろ!」
俺はちくわへ声をかける。それはマンダの支援スキルが時間切れになってしまったことへの警告で、そうなると再使用可能になるまでブレス攻撃を受けるわけにはいかなくなってしまうということだった。
「わかった! ——ねこまちゃん!」
「……っ」
安全が確保されないことを察したちくわはねこまへ合図を送り、彼女は先ほどの牽制のような威力の攻撃ではなく、最大威力の魔法を発動させるために準備をする。
そこに間に合うように、俺はテンの支援スキルを発動させ、彼女の魔法威力を強化する。
「いけ!」
「っ! ライトニングカイザー!!」
ねこまが魔法を発動させると同時に、周囲が真っ白に漂白された。
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