第120話 ファフニール討伐配信2
まずは、ボス部屋に突入した時点で、ファフニールの位置を確認して、地上に居ればちくわがタンク役としてヘイトを取り、上空に居ればねこまによる遠距離魔法で削る方向へシフトする。
その間、俺は必要なタイミングでテンによる支援と、マンダによる緊急防御を担当する。勿論テンが持っている能力でファフニールの熱波を防ぐ必要はあるのだが。
ちくわがしっかりとファフニールのターゲットを取って、ねこまが遠距離で確実なダメージを削っていく間に、東条君の近接火力をモビの素早さを乗せて打ち込み、翼を片方使えなくすることで、相手の三次元機動を封じる。
その後はほぼほぼ流れ作業である。飛べなくなったファフニールはサラマンダーよりは機動力もあり、隙が少ないものの、ここまで戦ってきた俺たちにとっては脅威ではない。
『しかし本当に勝てるのかよ』
『動画見たけど正直何人束になっても勝てる気がしないけどな』
『でも討伐レコードとかだとソロ討伐記録もあるよ』
コメントでは、説明を聞いたところで倒せるかどうか不安だという声が殆どで、到底倒せるとは思えないという意見が大多数だった。東条匠馬が出ているという事で、それを嗅ぎつけてアクセスしてきたリスナーたちも、彼が活躍する姿よりも、彼自身を見たいという意図のコメントが多くみられる辺り、期待されていないのだろう。
「じゃ、いこっか! 大丈夫大丈夫、ボクたちは強いから!」
『あ、なんか懐かしいなこの感じ』
『ちくわちゃんがんばれー』
『救護保険はちゃんと入ってるよね?』
ちくわがそう宣言すると、コメントではいつぞやと似た調子でコメントが流れる。あの頃から方向性は色々と変わったが、あの頃と同じファンが未だについて来てくれているんだなと分かって、俺は改めてちくわのカリスマ性を感じていた。
「クルルゥ」
ユキテンゲのお陰で、周囲は所々溶岩が噴き出しているというのに、汗がにじむ程度の暑さしか感じることは無かった。この調子なら、ファフニールと出くわしたとしてもすぐに肌を焼かれるという事はないだろう。
「そうだ! モブさん。私テンちゃんのステータス確認しておきたいな」
ボス部屋に近づきつつあるときに、ねこまが俺に水を向ける。俺は頷いてから、テイム後から育てたテンのステータスを開示する。
名称:テン
種族:ユキテンゲ2.0Lv4
力:5
知:40
体:3
速:35
スキル:ブリザード、凍結ブレス
支援スキル:ステータス強化<知>
『なんつーか、ステータス偏りまくってんな』
『昔のネトゲでこういうステ振りしたことあるわ』
『お? インターネット老人会か?』
「よーし、ついたよ!」
テンのステータスを見てリスナーたちがああだこうだ言っていると、ちくわが声を上げた。
「みんな、準備は良い?」
ちくわの言葉に、俺たちは配信開始前と同じように頷きあい、そしてボス部屋の扉に手をついた。
「せーのっ!」
全員が腕に力を込めて扉を押しあける。その先には赤黒い鱗と巨大な翼を持ったファフニールが、炎を孕んだ吐息を漏らしていた。
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