第119話 ファフニール討伐配信1
ファフニールのいるダンジョンは、ごつごつとした岩が転がっている火山地帯のような地形だった。空には黒々とした雲が立ち込めており、所々で稲光が走っている。
緊張をほぐすために深呼吸をしてから、俺達四人は目を見合わせて頷いた。
「飼い主殿のみんなー! 猛犬系ストリーマーの犬飼ちくわだよー! そしてぇ……」
「おはよう人間! 化け猫ストリーマーの珠捏ねこまでーす!」
「どうも、モブです」
配信が始まり、明るく宣言する二人に続いて、俺は控えめに挨拶をする。周囲にはすでにモビとテンがうろうろしていた。ちなみにマンダは大きすぎるのでボス部屋まで待機である。
『やっぱユキテンゲテイムしてたのマジなんだ!』
『ちくわちゃんとねこま相変わらずてぇてぇ』
『ビジュアル的にも華があるよな』
「今日はいよいよファフニールの討伐配信! モブ二号くんという助っ人を加えてどう戦うのか!? ……っていう感じなのですが、その前にモブ二号くんから報告があります!」
リスナーからの反応を見つつ、ちくわは彼等の興味を煽るように台詞を読み上げる。
『え……? モブ二号が?』
『どうして?』
『ユキテンゲの正式お披露目じゃないの?』
困惑しているリスナーたちの反応を見て、東条君は芝居がかった溜息を吐いて、前回までとは違った洗練された立ち振る舞いと自信に満ち溢れた声色で、話し始めた。
「……ボイチェン使ってねえのに、俺だってバレないのはどうなんだろうな」
東条君は仮面型のデバイスを脱ぐと、プライベートの時に使っていたミラーシェードのサングラスをかける。それだけでコメントが大量に流れ始めた。
『えっ!?』
『東条匠馬!?』
『嘘!?』
「東条匠馬だ。今夜もよろしくな」
通常、女性ストリーマー二人の配信に、男性ストリーマーが混じるのは、なんだかんだ言って炎上案件である。
だが、今回はダンジョンハッカーとしての側面と、以前から俺が存在している事により、通常の配信とは違う空気になっていた。
『モブの正体じゃなかったのかよ!?』
そんな言葉がコメントに流れてくるが、大量のコメントに押し流されていく。深河プロとウェブプロの異色コラボだとか、東条匠馬のメディア復帰を喜ぶ声とか、そういうコメントは時間が経つほどに増え、同時接続数も凄まじい勢いで上昇していく。
「東条君はモブ君経由で知り合って、ファフニール討伐の目標のためにコラボすることになりましたー!」
「ま、みんな気になっちゃうかもしれないけど、考えてるような事はぜんぜんないから安心してね!」
そして、三人は会話を続けて今回の配信内容の説明を行っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます