第118話 どうしよっか3
結局のところ、無いものは出せないという事で、特に埋め合わせの情報を提示できないまま、討伐配信二日前まで来てしまった。
「別に良いんじゃない? ボクもそういうミスすることもあるし、リカバリー案はもう出来上がってるんだから」
「うーん、まあそうなんだけど……」
ファミレスでポテトを齧る愛理に諭されつつ、俺は唸っている。
俺自身、別にそこまで気にしている訳ではない。だが、再発防止とか、そういう事を考えるとこのまま放置しておくわけにはいかない。俺はそう考えていた。なにせ顔バレする可能性があるのだから、慎重にならざるを得ないだろう。
「というか、愛理はどうしてるんだ? こういう時」
「えー……まあマニュアル作ってルーチン化しちゃうとかだけど、優斗ってそういうので納得しないよね?」
そう言われて、俺は苦笑いする。
「もう、本当に心配症なんだから」
「悪いな」
俺はそう言ってハンバーグを口に運ぶ、スキル上げも十分行ったし、動きの連携も問題ない。このままファフニールを倒しに行ったとしても、まず負けることはないだろう。そういう自信がある。問題は俺のメンタルだけだ。
「じゃあ、もういっそのこと絶対に失敗しない。失敗しても軽傷で済むように予防線を張るしかないんじゃないかな?」
「予防線かあ、顔バレだけは避けたいなぁ……」
顔バレ以外ならまあ何とかなる。みたいな感じには思っている。だとすれば、絶対に顔バレしない方法を考えればいいのだろうか。
デバイスを取り外すのはダンジョンの外に出てから……っていうのはいつもやってるし、だとすれば何もする必要はないのか? いや、しかし……
「うーん」
考えれば考えるほどドツボにハマっていくような気がする。
「もうさ、顔出ししちゃったら?」
「え?」
さんざん悩んでいると、愛理はそんな事を提案してきた。
「正直そこまで顔を隠すのも、本名を隠すのも、逆に目立つしさ、顔バレが一番駄目なら、それも解決しちゃうし、素顔公開ならユキテンゲお披露目よりも集客効果あると思うんだよね」
「……」
以前までの俺なら、断っていただろう。
だが、今は違う。東条君なんて本名で活動しているけど、常にファンやマスコミに囲まれててんやわんやの状態なわけではない。彼自身そこに辟易して休止した経緯はある物の、今の姿を見ると俺が想像するような過酷さはなさそうだった。
それに愛理や紬ちゃんを見ても、今まで過ごしてきてそこまで大変そうではなかった。むしろ、俺の考えすぎだったのかもしれない。
「ちょっと、考えさせてくれ」
愛理の提案で色々なことが脳裏をめぐっていき、俺は何とかその言葉を口から絞り出して、付け合わせの野菜を代わりに突っ込んだ。
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