第117話 どうしよっか2
「それにしてもヤバいですね、SNSとか動画切り抜きとか」
「あ、うん。ごめんね、なんか自分だけ先だししちゃって、予定もかなり狂っちゃったし」
東条君がそう言っていたので、彼はスマホでSNSのトレンドなどを確認していることが分かった。自分もつられて動画サイトのおすすめ一覧を確認する。
【モンシコ勢歓喜】配信で切り抜かれたユキテンゲの姿、あまりにも叡智【テイムモンスター】
【配信切り忘れ】モブのオフショットがヤバすぎた! クールキャラのふと見せる優しさ【キャラ崩壊】
【三体目テイム!?】モブの所持モンスターについての面白い雑学【ヤバい/最強/ケモノ/癒し】
いつかと同じように、大量にあることない事や切り抜かれたものがアップロードされている。これに辟易してSNSやコミュニティを見ても、俺の正体に関する考察だったり、画像解析だったり、声紋解析だったり、ちょっと怖いレベルでの特定作業が続けられていた。ラインを越えた物は事務所から注意が入るものの、これはかなり恐怖を感じる。
「まあ、切り忘れは俺に直接被害は来てないんで、それはぜんぜん構わないっすけど……」
ちなみに今、休憩室には俺と東条君しかいない。だからお互いにある程度気兼ねなく話すことができた。
「うーん、でもこういう状況みると、東条君が疲れて休止しちゃう理由もわかるなあ」
「あ、そういえば、俺の休止理由もそうでしたね。最近色々あり過ぎて忘れてました」
「温泉でばったり会った時は結構疲れてそうに見えたけど、十分デトックスできたようでよかったよ」
あの時から今まで本当にいろいろあった。彼がそれを忘れるくらい当然だろう。
「先輩も疲れたりナーバスになり過ぎるくらいなら休止するといいですよ。冷静になれば見えてくるところもあると思いますし」
「うーん、ありがとう。どうしようもなくなったら考えてみる」
何にしても、俺にできるのはファフニール討伐配信に向けてしっかり仕上げる事、そして再発防止のためのマニュアルをつくることだろう。
「二人とも、東条君の話してた?」
「!?」
俺と東条君は一斉に振り返る。時計を見ると既に俺の休憩時間は終わりを迎えていて、金澤さんが後退にやってきていた。
「もしかして、あなた達……」
まずい、気をつけようって思ったばっかりなのに、迂闊な発言で正体がバレるなんて、ましてや本人が碌に返送しないままここに居たら――
「東条君のファン!?」
「……はい、そうなんですよ」
心の中でずっこけた俺に代わって、東条君は眼鏡の位置を直しつつ自信満々に答えた。
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