第114話 回避スキル上げ作業

 ユキテンゲのテイムという一番の不確定要素を越えた今、俺たちにとって一番の課題はスキルレベルの確保と、確実にファフニールと戦い。勝てるかどうかになっていた。


 スキルレベルの確保は、確認すると以下のようになっていた。


――スキル

 槍マスタリーLv7

 魔法マスタリーLv2

 属性マスタリーLv2(火・回復)

 回避マスタリーLv6

 テイミング適性Lv★


 これを見ると、槍は必要な数値に届いているものの、回避マスタリーがあと少しだけレベル上げが必要だった。


 そしてこのスキルのレベルを上げるのは、一筋縄ではいかないのだ。なにせ「回避」マスタリーである。適当な敵の攻撃をただ躱していればいいという訳ではなく、ある程度身に危険を感じるレベルでの敵の攻撃を避け続けなければならないのだ。


「ゴゴゴ……」

「っ!!」


 そういう訳で俺は今回の配信で、クリスタルゴーレムと一対一で対峙して、ひたすら回避を行なっている。


 結晶体の張り付いた岩石を紙一重で躱しつつ、攻撃は積極的に行わず、受け流しを繰り返す。当たっていないからこそ緩慢な動きに見えるが、かすりでもしたら打撲では済まないので、それを忘れてはいけない。


『すげー、これ作業配信っていうよりも、実質魅せプレイのショーケースだろ』

『事も無げにやってるけど、これぶつかったらほぼ死ぬんだよな……』

『今度クリスタルゴーレムに挑むとき、参考にします!』


 視界の端に流れるコメントを見つつ、受け流すついでにカウンターを入れて少しずつ体力を削る。随分ボスも弱ってきたようだが、動きが鈍る様子はない。クリスタルゴーレムは無機系のモンスターだからこそ、弱って動きが鈍るという事が無いのがボスとしての強みであり、回避の練習に使う時の強みである。


『今日はユキテンゲ倒しに行かないの?』

『正直あの子可愛くて好き、えっちだよね』

『おいモンシコ勢が居るぞ』


 ユキテンゲがテイムできたことは、当面は伏せておくことにする。ファフニール討伐の配信で初お披露目の方が話題性を集められるとの柴口さんが中心になってみんなで判断した。俺の方もそっちのほうが落ち着いて配信できるので、何かとありがたかった。


「ゴゴッ……」


 ズドン、と地響きと共にクリスタルゴーレムが膝から崩れ落ちる。どうやら体力が尽きたようだ。俺は身体の中心にあるコアに向かって槍の石突を振り下ろす。


『お、倒した』

『おつかれー』

『今日は三回倒したし、終わりかな』


「そうだな、今日はこのくらいで終わっておく」


 コメントに向かって俺はそう答えると、俺は配信用ドローンに修了の信号を送った。

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