第113話 ネーミングセンス

 家に帰って、バッグをソファに投げ出すと疲れが一気にどっと出た。そのまま寝てしまおうかと思ったが、今日はパーティメンバーでのボイスチャットで報告会があるのでそういう訳にもいかない。飯と風呂を済ませてパソコンに向かわなければ。


 俺はそう考えて、風呂掃除と給湯を開始する。飯を食っている間にお湯を張って、ごはんを食べ終わった後に風呂に入る。そういう作戦だった。


「みんなお疲れー」


 色々と用事を済ませてからパソコンを起動して、愛理たちのボイスチャットに参加する。


「優斗おかえり! 今日の練習はどうだった?」

「私達は何とか頑張ってるよー、また合わせて練習する時が楽しみだね」


 愛理と紬ちゃんは順調に練習を続けていて、これなら近いうちに合流できそうだった。


「ああ、こっちは練習ついでに討伐したらユキテンゲテイムできた」


 俺の進捗を伝えると、画面の向こうでガタガタという音が連続する。


「それで、練習の方だけど――」

「いやいやいや! 先輩、練習はどうでもいいんで、テイムできたって本当ですか!?」


 俺が進捗の報告をしようとしたところで、東条君が言葉を遮った。


「あ、うん。なんかレクチャーしてもらってたらなんか出たから。それで、バフ係の動きを知るために今回は受ける側に回ったんだけど――」

「モブ君! 練習の話は後でいいから識別票のスクショあげられる!?」


 今度は柴口さんに遮られてしまう。なんだよ俺の勉強の成果を報告させてもらってからでいいじゃん。


 そう思いつつも、俺はユキテンゲのステータス画面を識別票に表示させて、それをスクリーンショットで保存してチャットにデータ共有させる。


「これだけど」


「わ! 早いね! さすが物欲センサーが壊れてる!」

「すごい……優斗さん本当にテイムしてるじゃないですか」

「狙ってできるんじゃないかって可能性に掛けてたけど……まさかこんな簡単に」

「すげえ、本当にユキテンゲだ」


 皆がそれぞれ反応してくれるが、俺としてはバフ役としてのロールプレイについて、今日勉強したことを語りたいんだが……


「よし、これでもうファフニールは討伐したも同然ね!」


 いやその……柴口さん。いちおう俺達も強くならないといけないから……まあ、それはみんな分かってるだろうし、いいか。


「ところで名前、今回は普通の名前なんだね」


 俺が苦笑いを零したところで、愛理がテンの名前について言及してきた。


「ん? ああ、普通というか、ある程度考えて準備する時間はあったからな……というか、モビとマンダってそんな変な名前か?」


「うん」

「そうだね」

「流石に擁護できないな」

「言うまでも無いわね」


 どうも俺のネーミングセンスは変らしい。

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