第112話 これからの訓練方針

 解説を見ることができるのは、紬ちゃんが復帰した配信の後くらいに気付いたことで、具体的にどのような作用をしてどんな効果があるのかを閲覧できるようになっていた。早めに気付いておけばよかったのだが、いかんせんあの頃はそこまで熱心にダンジョンハッカーしてなかったからな……


――ステータス強化<知>

 雪天花の持つZET親和性を媒介して、魔法の威力を上昇させる。


 なるほど、これはタイミングを見て紬ちゃんに使うのがよさそうだな。頭がよくなるっていう具体性が無い癖にちょっと怖い高価じゃなくて良かった。


「キュイッ」

「クルルゥ」

「ん?」


 周囲の空気が温まり始めたのを感じると同時に、テンとモビが俺の近くにかけ寄ってくる。どうやらミーコさんの視線に耐えかねてしまったらしい。


「ミーコさん、そろそろ……」

「あっ! は、はいっ! ごめんなさい!」


 じっとりとした視線を向けられていたテンとモビを端末に返すと、ミーコさんは慌てて頭を下げてきた。


「そ、その、初めてテイムの瞬間を、み、見てしまったというか、じっくりボスモンスターを確認する機会も無かったから、というか」

「うん、まあ……みんなそういう反応するよね」


 正直なところ、そこまでたくさんの人間と関わったわけではないから、誰でもそうするとは自信を持って言えないが、少なくともミーコさんみたいな反応をするのには理解ができた。深河プロ内で他のストリーマーとコラボした時も、似たような反応をする人もいたしな。


「とりあえず。ダンジョンから出ようか」


 ボスモンスターを倒したダンジョンに長居をするメリットはない。こんな所からはさっさと出て、軽く汗を流した後に喫茶店化ファミレスでくつろぐべきだろう。


「あ、あのモブさ――コンビーフさん。できればもうちょっとユキテンゲを……」

「まあまあ、次に会う予定が無いわけじゃないんだから」


 食い下がろうとするミーコさんを何とかなだめて、俺たちはダンジョンの外に出ることにした。



――



「あ、で、ですね、今回実感したと思うんです、が――」


 なんとか落ち着くまで待ってから、俺たちは喫茶店で反省会をしていた。


 いくらユキテンゲの猛吹雪を無効化できていたとはいえ、モビの<速>強化と支援魔法「アクセル」のそこまで大きな違いはなかった。だというのに、あそこまでの安定感を出せるのは、やはりプレイスキルと言う外ない。


「あ、その、必要なタイミングで、ただしい支援をするには回数をこなす必要があって、ですね」

「うーん、ということは、これから何回かはペアで討伐練習をすることになるのかな?」

「あ、そ、そうですね、その後元々のパーティに戻って連携を確認すれば完璧、です」


 なるほどそうなると、なるべく近いうちにもう一度集まって、倒しやすいボス相手に倒して回るような方向で練習していくことになりそうだな。俺はそう考えて、抹茶ラテを口に含んだ。

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