第106話 陽にあてられて殺菌されてそうだった

 動きに関しては、実際に見たほうが説得力がある。


 いくら文面で説明されようとも、実際にどのような動きをしているかは伝わり辛いし、それは図解されても同じである。


 ただし、それは行動が理解できるという前提であり、行動が理解できないのなら口頭での説明などの前提がどうしても必要になってくる。


「あ、そ、その、こんな感じです」


 つまり何が言いたいのかというと、俺には彼女たちが何をしているのか皆目見当がつかないという事だ。こんな事なら普段からマニュアルを読み込んでおくべきだったか。


「すごい……ファフニールがあんな簡単に……」

「え、あの、で、ですね……立ち位置、えっと皆さんのを教えてほしいんですけど」


 ミーコさんの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。そういえば全員が適当に動いて、適当に連携していたので、タンクとか火力担当っていう概念はぜんぜんなかったのだ。


「あーちょっと相談させてもらっていいかな?」


 愛理がそう言って、俺達を集めて相談を始める。


「どうする? 役割分担とか……」

「んーとりあえず私は遠距離火力かな」


 愛理の問いかけに、紬ちゃんはほぼ即答する。確かに雷属性魔法を使えるのは彼女だけだし、そもそもの役割分担として、元から遠距離火力というロールに近い事はする予定だったので、むしろ予定調和というか、変更点が最も少ない形になるだろう。


「じゃあ、ボクと東条君がタンクか近接火力役になるかな?」


 紬ちゃんの言う事に全員が頷き、続いて愛理は自分と東条君のロールを確定させる。


「そうだな、問題はどっちがタンクをやるかだが――」

「あ、それはボクがやるよ。手数は多いけどファフニールの鱗を破る威力はそこまで出せないから」


 三つのロールが確定したという事は、俺のロールも決まったという事だ。つまり――


「じゃあ、俺はバフ・デバフ役か」


 俺が言うと、全員が頷いた。


「お待たせ! この子が遠距離火力役で――」


 愛理が役割分担や今後の方針を話し合っている間、俺は自分にその役目が果たせるのかという事を考えていた。


 まず、大きいハードルとなるのが支援魔法の習得だろう。これを越えなければもうどうしようもない。


 そして、動きを覚える事。これは流石に時間を掛ければできる。


 最後に忘れてはいけないのが、俺がASAブラストで瞬間的に火力を出せる優位を、どう生かすかという事だ。うーん、意外とやることが多いぞ。


「あ、はい……じゃ、それで」

「うん、よろしくね!」


 色々とこれからの事を考えていると愛理の声が聞こえてきた。どうやら話がまとまったらしい。


「で、結局どうなった?」

「うん、マンツーマンでしばらく動きを教えてくれることになったよ。優斗はバフ・デバフ役だからミーコさんに教わってね!」

「ああ……分かった」


 愛理に言われてちらりとミーコさんの方を見ると、人気者オーラによって溶けそうになっている彼女と目が合った。


「その……よろしくお願いします」

「う……あ……はぃ……」

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