第105話 ガイダンス2
「ちょ、ちょっと先輩! 支援魔法知らないってマジですか!?」
「え、うん、知らない」
東条君が俺に食いつかんばかりに顔を寄せてくる。魔法は魔法じゃないのか?
「探索者向けマニュアルに書いてあるのに!?」
「紬ちゃん……優斗、説明書読まないタイプだから……」
紬ちゃんも信じられないというリアクションだし、愛理と柴口さんは頭が痛そうにしている。
「とりあえず、話を進めましょう……篠崎君はマニュアルを確認しておきなさい」
呆れられつつも、柴口さんにそう言われて俺は識別票端末からヘルプメニューのマニュアルを選択して、魔法の項目から探そうとしてその下に「支援魔法」という独立した項目があるのを見つけた。
魔法とはまた違う項目な事を不思議に思いつつ、その項目を開いてみる。
「それで、あの、えっと……具体的、っていうか動きは――」
ミーコさんも色々と説明をしてくれているが、まあどうせあとで実演してくれるだろうから、今は支援魔法について調べておこう。
読んでいくと、支援魔法がなぜ魔法と別枠なのかがだんだんと分かってきた。
魔法は、現象を起こして対象を攻撃する仕組みだが、支援魔法は対象に直接作用したり、力場を発生させる魔法で、回復属性の魔法も厳密には支援魔法に分類されるらしい。
体感時間を引き延ばす事による反射速度の向上や、斥力場を作ることで炎や電撃から身を守ったり、武器の切れ味を向上させることもできるらしい。
なるほど、ファフニールの熱気をどうやって防いでいるのかと思ったら、こういう便利な技能があるんだな。
いや、ちょっと待てよ。納得しかけたが、よく考えてみるとおかしい部分が浮かび上がる。
だとすれば、ユキテンゲのテイムなんて必要はない筈なんだが、なんで柴口さんたちはこっちじゃなくてユキテンゲのテイムを選んだのだろうか。
不思議に思いつつ、読み進めていると「支援魔法マスタリースキル取得の前提となる資格一覧」と言うものがあった。なるほど、強い魔法にはゾハルエネルギーの取り扱い免許が必要とかあったもんな。おれはそう思いながら項目をタップする。
・ゾハルエネルギー取扱二種免許
・危険物取扱者免許 乙種7類
・ZET基礎講習受講者もしくはZETエンジニアライセンス
「……」
なんか明らかに一朝一夕で取れる資格ではないことはよく分かった。
「――で、あの、その、そういう感じで、だ、だから、これから行くから、ダンジョン!」
ミーコさんの話も一段落したようで、これから実際に動いて見本を見せてくれるらしい。
「ま、説明聞くより見たほうが早いよねー」
「しっかり勉強させてもらうね!」
愛理と紬ちゃんはやる気満々に拳を握って意気込んでいた。
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