第104話 ガイダンス1

『……』


「今日はよろしくね。みんなボクたちとそんなに年齢変わらないのに上級なんてすごいね!」

「あっす……」

「あ、ダンジョンの中ではスキルとか使えるんで年齢とか関係ないですよ」


 超がつくレベルで会話が苦手な人間でも、分け隔てなく接してくれる人間っていうのは、集団の中で一人はいたほうが良い。高校時代にそれは経験していたのだが、まさか今になってまた実感することになるとは。


 なんとか合流した俺たちは、ダンジョンに入る前のミーテングをするために、ファミレスに入っていた。深河プロの会議室を使う訳にもいかず、かといって日曜日の喫茶店は九人分のスペースを作れるはずもないので、この選択は仕方ない部分があった。


「それで? 私達にファフニールの倒し方レクチャーしてくれるんだって?」


 紬ちゃんがそう言うと、四人は一斉に身を竦めてこそこそと話し合う。


「あ、じゃ、じゃあミーコ、説明して」

「わ、私!? リーダーはサカキなんだからサカキがやるべきじゃん!」

「り、リーダー命令だから!」


「……先輩、こいつら大丈夫なのか?」


 四人がわちゃわちゃと話し合っているのを見て、東条君が耳打ちしてくる。


「う、うん、多分大丈夫だと思う。チャットで話した時はまともそうだったし」


 ネットでの人格と、リアルでの人格は別、そういう話はよく聞くが、目の前で繰り広げられているこれは、それの範疇に入るのだろうか。今更ながら俺の中で不安がどんどん膨れ上がっていくのを感じる。


「あのー、えっと、じゃあこれから、ファフニールの少数討伐について、簡単に説明するね。まずはメンバーの役割について」


 ようやく話がまとまったのか、ミーコさんが説明を始める。会った時の滅茶苦茶で噛み噛みの口調ではなくなっていたので、幾分か慣れてきたらしい。


 説明の内容としては次の通りだった。


 通常数十人単位で挑むボスモンスターなので、属性以外の攻撃用マスタリーレベルは7以上が必須。

 また、回避マスタリーも全員が7以上持っていることが好ましい。

 メンバーとしては遠距離火力、タンク、近距離火力、バフ・デバフを選出。


「ん、バフ・デバフって何ですか?」


 俺は話を聞いている間に、気になった単語があったので聞いてみることにした。


「え……っと具体的に言うと、仲間を守ったり……敵に不利を押し付けたり……あの、ヒ、ヒーラーと役割は近くて……」

「あ、いや、ゲームやってるからそこら辺はわかるんですけど、そんな便利な物、ダンジョンであるんですか?」


『え?』


 俺が聞くと、周囲にいる八人全員が一斉に頭に疑問符を浮かべた。

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