第102話 「あっ」ていっちゃう癖
「えーと、彼女はミーコさん、上級ダンジョンハッカーのひとり」
「よっろしくぅ!」
「すごい陰キャっぽいけど大丈夫なんですか、この子……」
愛理と紬ちゃんが挨拶をすると、ミーコさんは引きつった表情で不規則に息を漏らした。もしかするとこれは愛想笑いなのかもしれない。
「てか先輩、今日会うパーティって四人だったんじゃないのか?」
「あーうん、まあ、そうなんだけど……」
東条君の言葉を受けて、俺は周囲を見渡す。
「っ! ……」
ミーコさんはその様子を見て、スマホを取りだすと猛然とフリック入力をし始めた。そして、俺のスマホチャットアプリに通知が表示される。それを確認するとオフ会用に作ったグループチャットの書き込みだった。
――もういいでしょ! お前ら早く来なよ! こっちは滅茶苦茶恥ずかしいんだよ!
――ていうか誰だよコンビーフなんてID使ってる奴はナードだから同類だなんて言ったやつ!
――コンビーフの連れ合いイケメン二人にギャルに地雷系で私らが苦手な人ばっかじゃん!
「……」
猛然と書き込まれるミーコさんの泣き言に、苦笑しつつ周囲を見回す。彼女がこんな感じだとすれば、割とすぐに見つかるはずだ。
「あ」
いた。遠くのビルの角からこちらの様子を窺っている人影が三つ。俺はその人たちの方へ歩いていく。
三人とも女の子で、身長が高い猫背の人と、少し太めの人と、一五〇センチもなさそうな背の低い人で、全員がどこか垢ぬけない中学生のようなファッションをしていた。
「や、やばいよミーコ。それコンビーフさんも見てるチャットだよ……」
「どどどうしよ……やめさせなきゃ、でも書き込んだら余計目立っちゃう……」
「お、おちつこう、一旦ミーコは置いて離脱して、中止だって後から教えれば……」
「あのー……」
周囲の状況そっちのけで作戦会議をしている集団に、俺は恐る恐る声を掛ける。多分話している内容からして間違いは無いようだけど、一応確認はしておこう。
『ヒィッ!?』
三人同時に声を引きつらせる。なんだろうこっちが悪いことしているような空気は。
「サカキさん、アキアカネさん、イカソーメンさんですよね? コンビーフです」
「あ、あああ、今日はよろしくね、ふひっ」
「あ、……っす。ミーコ共々……っす」
「あ、そちらのパーティメンバーの人も、よ、よろしくお願いします、ふひぃっ」
どうやらこの三人で合っているようだったので、愛理たちを呼ぶ。
しかし、この人見知りっぽい四人でオフ会しようなんて提案よく出来たな。と俺は感心半分呆れ半分に考えた。
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