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第101話 お前ネットやとバリおもろいやん

「お待たせ! 優斗早いね」


 待ち合わせ場所について、ソシャゲのデイリーミッションを消化していると、愛理が声を掛けてくれた。


「おはよ、他のみんなは?」

「しらない。けど遅刻の連絡は貰ってないよ」


 時計を確認すると九時四十五分。確かに待ち合わせ時間にはちょっと早すぎるかもしれない。


「それにしても、上級ハッカーの知り合いなんて居たんだね」

「ま、まあ数日前に会ったばっかりなんだけど」


 あのサーバーに居た四人の話を愛理や紬ちゃんにすると、俺の考えと同じように、参考にさせてもらおうという話になった。柴口さんだけは懐疑的だったが、最終的には柴口さん自身も同行することで納得してもらえた。


「楽しみだね!」

「あーうん。ただ、正体がバレないように注意しないとな」


 勿論、正体がバレることは避けなくてはならない。相手は上級ダンジョンハッカーで、こちらはストリーマー、お互いにある程度知名度があるなら、あちら側も配慮してくれるとは思うのだが……


「モ――先輩! おはようございます!」

「優斗さんに愛理さん。おはよー」


 紬ちゃんも珍しく猫耳パーカーではなく、高校生らしい格好である。東条君はいつものバイトスタイルだ。


「皆おはよう、急だったけど何とか集まれてよかったよ」


 次の日曜日、昼の十時から予定を空けてくれ。そんな呼び出し方で、全員が集まれ譚は本当に幸運だった。愛理たちは夕方から配信があるので忙しそうだが。


「とりあえず……この格好ならみんな大丈夫そうね」


 柴口さんが到着し、俺たち全員を見て溜息を吐く。この人には何かと迷惑をかけっぱなしなので、いつかお礼をしなきゃな。


「柴口さんおはよー」

「おはようございます」


 紬ちゃんに続いてあいさつすると、柴口さんは少しだけ微笑んで頷いてくれた。東条君側――ウェブスタープロジェクトとの調整はやっぱり必要だったらしく、そっちの方でも色々と話し合っているらしい。


「それで……ダンジョンハッカーの人は?」

「うーん、まだ来てないっぽいんですよね。そろそろ――」

「あ、あの……」


 周囲を見回そうとした時に、服の裾をくいっと引っ張られた。


「ん?」

「あの……えっと……」


 振り返ると、おさげ髪に丸眼鏡という今更いるのかなって言うくらい地味な女の子が、俺の上着の袖を摘まんでいた。


 猫背で巻き肩で服も野暮ったいコート、あまりにも地味すぎて逆に目立っている。そんな子が、唇を震わせながら、何とか言葉を話そうとしていた。


「あ、どうも、何でしょう?」

「そ、その! あ、こ、ここ、こここ……」


「優斗、知り合いの子?」

「いやちがうけど――」

「コ、ン、ブィーフさ、ん。ですよね? あ、わ、わたし、ミーコです」


「……あ、ごめん知り合いだった」


 ネットとは全然違う物言いに、俺は面食らっていた。

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