第99話 コンビーフの缶の形はですねぇ

 風呂を済ませた俺は、寝巻の上から毛布をかぶってパソコンに向かう。


 サーバーのチャットルームはさっき見ていた時よりも増えており、どうやら入れてくれたという事らしい。


『戻りました。入れてくれてありがとうございます』


 書き込んでみたが、反応は無い。まあ俺も情報収集が目的で交流したいわけじゃないし、別にいいか。


 雑談チャンネルやスキル構成の考察などが並ぶ中で、俺は攻略情報のタブを開いて、中級ボスモンスターの中からファフニールの項目に飛ぶ。


――行動指針

――大規模パーティで挑む際の連携例

――挑戦時のおすすめ防具


 色々な情報がピン止めしてあり、その中には明らかにwikiにまとめられていない情報もあった。


「……」


 何故外部にこういった情報を流さないのだろう? そう考えつつも、行動指針の項目から情報を確認していると、雑談チャンネルからメンションが届いた。


『よろしくお願いします。cornedbeefさん』


 cornedbeefさん。とは俺のIDである。苗字の篠崎から頭文字を一文字とってノザキ、そこから発想してコンビーフという名前でネット上に存在している。知り合いからは「コンビ」「コン」「馬肉」などと呼ばれている。ちなみに余談だが、コンビーフは馬肉ではなく牛肉で、馬肉を一部使ったものはニューコンミートと飛ばれているので、呼称として馬肉は不適当である。


『あ、はい。よろしくお願いしますSAKAKIさん。読み方はサカキでいいんですかね?』

『はい。それで、さっき見せて貰った雪華晶なんですけど、どうやって手に入れました?』


 俺はその書き込みを見て「食いついたな」と思った。やっぱり上位のダンジョンハッカーともなると、そういうのは気になるのだろう。


『火属性を使わずに討伐したら素材が多く貰えそうだったんで、試したら落ちました』

『火属性ナシでやったのかよ!?』


 チャット欄に新しい人が書き込んでくる。IDには「mi-co」と書いてあった。


『え、なんかおかしいですか?』

『融解状態で倒さなければいいだけだから、融解状態の時に毒とかダメージ蓄積させて、状態解除されたところで命中率高くて出の早い雷属性で仕留めるのがセオリーだろ』


 mi-coさんはそんな事をつらつらと書いていく。なるほど職業として上位の討伐をしているなら、そういう効率的な倒し方を知ってるよな。俺は素直に感心した。


『ミーコ、いきなりそういうのは新人さん委縮するからやめて』


 サカキさんがそう言うと、ミーコさんは頭を下げる絵文字と舌を出してウィンクしている絵文字を連投する。どうやら謝っているらしい。


『とにかく、こんな感じでダンジョンハック最前線の情報が集まってるから、知りたいことがあれば見て回ったり、質問してみてくださいね』

『はい、ありがとうございます。ところで気になったんですけど、ここって結構wikiに乗ってない情報ありますよね? なんでなんです?』


 俺は話ができるうちに、ちょっと気になったことを聞いてみることにした。

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