第98話 面接アリサーバー
『えっと、ちょっと身バレはしたくないっていうか……』
『プロの方も在籍していますので、ある程度の身分証明は必要だと思っていまして、まあ本名とかは伏せて頂いて大丈夫ですので』
どうしようか。
正直なところ、あまり見せたくはない。どこから身バレするか分からないのだ。少なくとも、スキルとテイムモンスターのリストは隠す必要はあるし、上級者なら装備構成だけでも特定するかもしれない。そうなると、ボス討伐素材をいくつか見せるのが一番だろうか。
そもそも、別の場所に入ることにしてもいいのだ。だから、ここで「晒したくないので入るのをやめます」と言ってもいい。
だけど、このサーバーにはプロも在籍していると話していた。間違いなく今までよりも有益な情報があることは間違いないだろう。そうだとしたら、ここで危険な橋を渡るのも悪くはない筈だ。
俺は識別票から素材リストを開き、写真を撮る場所を探る。そこで俺は、今日手に入れた「雪華晶」が目に入る。そうだ、これを持っていると言えば、相手にも分かりやすいし、もしかすると有益な情報を持っている人として、受け入れてもらいやすくなるかもしれない。
『これで良いでしょうか?』
必要最低限の部分を表示して、メモ紙にIDを書いてスマホで撮った画像をアップロードする。
『大丈夫です。少しお待ちください』
『あ、じゃあ僕その間にお風呂入っちゃいますね』
俺はパソコンをそのまま放置して、風呂に入ることにする。
あの画像で特定されることはそうないだろうが、検索できる範囲には存在しないボス素材を見せたことで、何が起こるだろうか。火属性を使わずにユキテンゲを倒すという方法は、正直なところ他の人も試さないはずがないだろう。俺も気になってちょっと試したら掘り当ててしまうような事だったしな。
だが、それでもドロップ方法は不明という事になっている。それはなぜか。俺の考えでは見当もつかないが、プロで上級ダンジョンにもガンガン潜る人達であれば、それも分かるのではないだろうか。
身体を洗って、湯船に肩までつかりつつ、色々と考えるが、答えは見つからない。そういえば東条君も一緒だったが、彼はこの情報をどうするつもりなのだろうか。
――
『へぇ、雪華晶自力で取る奴が来たんだ』
チャットルームに文字列が入力される。このチャットは篠崎優斗が入ろうとしていたサーバーの、管理者とその周辺人物――パーティメンバーしか閲覧できない設定になっていた。
『はい、それで、彼はこのサーバーに入りたいっていう事なんですけど』
『いいと思うよ、というかむしろ囲っちゃったほうがいいんじゃない? 自力でそこまで強くなるダンジョンハッカーなら』
『うんうん、ストリーマーの「おままごとダンジョンハック」よりは随分役に立ちそうだし』
書き込みは肯定的なものが増えていく。サイト管理者はその発言を見て、彼をこのサーバーに迎え入れることを決めようとする。
『ま、これが本物ならね』
だが、そのことを打ち込もうとした時に、一人がそう書きこんだ。
『スクショ加工して識別票に画像表示すればできないことはない。わざわざこういうのを見せてくる相手は信用できないね』
『では、どうしましょうか』
『まあ、入れちゃってもいいんじゃない? 必要であればリアルで会う事も視野に入れて、ちょっと首輪だけつけておこうよ』
その書き込みで、メンバー全員が同意した事になった。
『じゃあ、決定ですね』
『うぃー』
『OK』
『はいよー』
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