第97話 ダンジョンハッカーコミュニティ

「……ふぅ」


 やっと帰ってきた。そんな思いが俺の脳裏を過っていく。家の玄関を開いた俺は、その足で風呂の栓を締めて給湯をオンにする。昨日のうちに掃除まで済ませておいて良かったな。


 さて、待っている間に夕飯を食べちゃうか。


 お湯が溜まるまでの間、俺は洗濯機に自分の服を詰め込んで、下着姿になって暖房をつける。季節柄、ちょっと肌寒い気温になっていたが、外で散々動いていたのと、身体が冷え切る前に暖房が効き始めるので、まあ何とかなるだろう。


 電子レンジにコンビニで買った汁なし担々麺を突っ込んで、推奨目安を見ずにタイマーをセットしてスイッチを入れる。だいたいこういうのは三分やれば丁度いいのだ。


 レンジが回っている隙にパソコンの電源を入れてログインをしておく。これが意外と時間かかったりするのだ。


「よっと」


 パソコンの準備ができたところで、レンジから夕飯を持ってきて、啜りつつユーザーコミュニティや動画サイトをいくつか回って、新しい情報が無いか確認していく。


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 相変わらずの動画たちで、新規の情報は全くといっていいほど無い。情報収集のためにも、少し検索範囲を広げてみるのも良さそうだ。


 俺はそんな事を考えながら、コミュニティのリストがまとめられているサイトを上から順にみていく。


 いくつかのサーバーコミュニティにはすでに参加しているが、今回は少し別の方面から調べてみようか。そう思って俺は、いつも通りのストリーマーのファンコミュニティではなく、ダンジョンハッカーたちの情報交換が主となるコミュニティに参加してみることにする。


 自分のアカウントが入室したログを既読にして、いくつかの規約にチェックを入れて入室する。しかしチャットルームが未だに見えない。どうやら面接をして、それをパスできれば参加できるようだ。


『初めまして』


 俺は面接と書かれている部屋に書き込む。するとほどなくしてサーバー管理者と思しき人が反応を返してくれる。IDは「SAKAKI」と書かれていた。


『どうも、この鯖の規約は読んでくれました?』

『あ、はい』


 そのまま彼と基本的な受け答えをして、自分がこのサーバーに入ろうとした目的も伝えておく。


『ふむ、情報収集ですか』

『ボス討伐で今ファフニールに挑戦しようとしているんですけど、このままだと勝てそうにないんで、何とか情報を集めておこうかなと』


 俺がそう書きこむと、しばらく書き込みが滞った。恐らくアクティブユーザーと相談しているのだろうか、俺はあんまりにも時間がかかるなら、風呂にでも入っちゃおうかなとか考えていた。だが、SAKAKIさんの返答は存外に早かった。


『分かりました。では、最後にあなたの識別票をユーザーID付きでアップしてもらえますか?』


「えっ」


 俺の口から思わず声が出ていた。

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