第96話 一歩前進?

「うー寒い寒い……」

「マンダ、軽く火を吹けるか?」

「グゥオッ」


 ユキテンゲを倒した後、体温を奪っていく風は無くなったものの、まだ寒さが残るボス部屋でマンダが空中に向けて火を吹く。周囲の空気が一気に暖かくなったところで、俺と東条君はドロップリザルトを確認することにした。


 雪天花の振袖×3

 雪天花の爪×6

 雪天花の頭殻×1

 雪華晶×1


 さっきまでとは全く違うドロップ品に、俺の考えが補強される。それに、今までドロップ品として存在しなかった「雪華晶」があることからも、恐らくこの倒し方が素材を取るための方法なのだろう。


「すげえ……レア素材だと思ってた素材がボロボロおちてる……」

「あ、東条君も落ちてたんだ」

「ああ、逆に『雪解け水』が全然ねえ」


 言いながら東条君は識別票の画面を共有してくれる。そこには俺ほどではないが、今までレアと呼ばれていた素材の数々が表示されていた。


「しかしこの倒し方じゃないと素材が手に入らないなんて、手応えとしては上級ボスと比較しても遜色なかったイメージだぞ」

「そうだね……こないだのクリスタルゴーレムと比べてもそれ以上に強かった」


 あの時はモビもマンダもなしで戦って、二人で対処できた。だが今回は、モビの助けが無ければまともに戦う事すらできない。


「なんにしても、これでユキテンゲ素材武器が現実的な選択肢として見えてきたな」

「テイムはまだまだかかりそうだけどね」


 そう、あくまでメインの目標は、ユキテンゲのテイムで、それの目的はファフニールの少人数討伐である。あくまで氷属性武器はついでの作業であることは忘れてはいけない。


「はぁ、でもまあ、あとは雪華晶のドロップさえあれば武器は作れるだろ?」

「あ、うん。それなんだけど――」


 東条君に話しつつ、俺は自分の画面も共有させる。


「ドロップした」

「マジか……」


 驚いて声をあげるかと思いきや、東条君は絶句してしまった。まあ幻というか、存在自体を疑われていた素材が今目の前にあるとなれば、当然か。


 しかし複数人で、かつASAブラストを併用すれば、安定して弱体化していないユキテンゲを倒せるというのなら、防具を色々と作ってみてもいいかもしれない。これだけ強い冷気をまとったボスなのだから、防具には熱気耐性みたいな効果があってもいいだろう。そう考えると、まだまだたくさんの回数をこなす必要がありそうだ。


「……ま、それならこれからの戦い方としては、コンビネーションを主体に鍛えつつ、火属性縛りでユキテンゲと戦う。みたいな感じで行くか」

「うん、そうなると思う。一応帰ったら情報をグループチャットで共有しておこうか」


 俺と東条君は頷きあって、翌日以降の方針を確認した。

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