第95話 コンビネーションで戦おう
モビの支援スキルを発動させると、ユキテンゲの動きは攻撃を当てる事すら不可能な速度から、かすり傷程度なら負わせられるくらいの機動力になっていた。
「クルルルゥ」
「っ!!」
そして、機動力について行けるようになったとはいえ、弱体化していない。氷の風は相変わらず身体に襲い掛かるし、カイロも気休め程度の保温しかしてくれない。
「――……」
そして、加速した意識の中では、東条君の動きが分からない。連携をするにしても、意思疎通が不可能だ。
俺の声は向こうからすれば早回しのように聞こえるはずだし、東条君の声はテレビとかユーチューブでよくある「うぉおおおぉぁぁ……」みたいな声に聞こえてしまう。
恐らくASAブラストを発動すれば、この氷の風を突破することは出来そうだが、支援スキルを発動した上でそれを突破し、尚且つ一撃で仕留めるような攻撃をしなければならないとなると、中々ハードルが高かった。
「はっ!」
だから、俺はそれをとどめにだけ使うことにしていた。
今の武器は毒の付与を行なえるもので、それだけで体力を削る事ができるものだ。
「クルルッ」
モビの支援効果が切れ、ユキテンゲの姿がまた目で追い切れなくなる。
「先輩!」
「毒は入れた! もう一回行くぞ!」
ステータス支援はすぐには連続使用できない。クールタイムがあるのだ。その間になるべく意思疎通を図って、ユキテンゲを仕留めきれるように話し合う。
「次発動した時、何も考えず最速で振り下ろしてくれ! あてようとしなくていい!」
「分かった!」
クールタイムが終わるまでは、東条君はもちろん俺も牽制と回避に集中することになる。無数のかすり傷と毒の影響でほんの少し動きの鈍った相手には、先程よりも近いところに斬撃を放つことができるようになっていた。
「クルルルッ」
指先がかじかみ、細かい動きが難しくなってくる。泣いても笑っても、次の支援とASAブラストが最後のチャンスだろう。
「いくぞっ!」
俺はそう叫んで、モビの支援とASAブラストを同時に発動させる。すぐに視界で舞う氷の刃がゆっくりとした動きになり、俺だけが時間から取り残されたような景色になる。
効果時間は支援とASAブラストの二つともほぼ同じくらいで、なんにしても今すぐに決着をつける必要があった。
「っ!!」
ユキテンゲの側面や進行表行へ回り込み、槍を突き出す。
「クルル」
しかしそれは簡単に躱されてしまう。だが、躱すという事は動きを誘導することができる。ASAブラストを使用した状態なら、かするだけでも瀕死にすることができる。だから、俺は東条君が反応しやすいような位置までユキテンゲを誘導し、ベストな位置にまで追い込む。
ASAブラストの残り時間がゼロに近づく中、俺は地面を蹴ってユキテンゲへ肉薄する。
「クルル――」
高威力高機動な俺の攻撃に気を取られたユキテンゲは、俺の方を見て警戒の鳴き声を上げ、そして頭上に迫る東条君の大剣を意識から外してしまっていた。
「――らったぁっ!」
「ク――」
持続時間が解除されると同時に、東条君が声をあげる。ユキテンゲが鳴き声を上げる間もなく両断されたのは、それとほぼ同時だった。
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