第37話 軟着陸したい
名称:マンダ
種族:サラマンダーLv1
力:10
知:9
体:12
速:4
スキル:火炎ブレス
自室でマンダのステータスを確認すると、初期状態のモビと比べればかなり高いステータスを持っていた。
中でも体のステータスが高く、モビの性質も含めて考えると、体が伸びる代わりに速のステータスの伸びが今ひとつになるようだ。
「キュ?」
講習を受けたので、今はペット代わりにモビを外に出している。他人に見られるとマズい事になるが、そうそうみられることはないし、そもそもまさか隣にテイムモンスターがいるとは思わないだろう。突然の来客も、テイムモンスターのストレージ化はすぐにできて、モビ自体も小さいので大丈夫だろう。
モビは大丈夫だが、マンダは出すだけでも大事件になる。特にこんな首都圏の住宅街では、物を壊さずに出す事すらできない。使い勝手はモビの方が圧倒的に取り回ししやすい。
だが、マンダはボスモンスターである。成長曲線がなだらかになったモビはある程度放置して、こちらの強化に専念するべき、というのがゲーマー的な判断だろう。
3.0まで育てたモビと比べれば、合計値ではまだモビの方が上で、体のステータスはマンダが二倍くらい差をつけて大きいものの、速の値は五分の一程度しかなかった。
だが、3.0になるまでで、ステータスはモビの場合は48ポイント上がっているのだ。うまい事育てることができれば、マンダはかなり強くなるはずだった。
「モビ、戻すぞ」
「キュイッ!」
ストレージ内にモビを格納して、俺はスマホで動画サイトとストリーマーのファンコミュニティを周回することにする。
【配信切り抜き】前代未聞の二体目テイムの瞬間【モブ・モビ】
【ボスモンスター】サラマンダーテイムの確率っていくつ?【解説動画】
【徹底考察】モブの正体について【最新版】
「……」
動画サイトのおすすめは、俺がダンジョン配信関係ばかり見ているという事もあるが、見事に俺の話題一色だった。ここまで来ると特定されるのも時間の問題という気がしてくるが、幸いなことにまだ俺に迫るような情報は、全く出てきていなかった。
当面は変わらない生活が出来ることに安心しつつ、ファンコミュニティの方も巡回する。
「サラマンダーって一応倒しやすいけどボスモンスターだろ、テイムできんの?」
「一応テイミングシステム上は『モンスター』としか書かれていない。ボスモンスターに関する制限はないみたいだ……ってかこれ何回話すんだよ、ピン止めしとけよ」
「ちくわちゃん九回目でようやく逆鱗取得だって、物欲センサーめっちゃ働いてた」
深河プロダクションを中心に話すチャンネルでは昨日の配信がずっと話題になっていたようで、その合間にちくわの戦果が報告されていた。
「ちょっといいですかね? 珠捏ねこまちゃんの休止宣言なんですけど、続報聞いてる人います?」
俺はちくわの戦果報告に加えて、ねこまの話題を投下することで、俺の話題を流そうとしてみる。
「あーモブとちくわちゃんのコラボ楽しみだな」
「ん、ねこま? ……あー、なんも聞いてないけど、事務所側が大丈夫だって判断したら復帰って言ってたよな」
「ていうか今はちくモブでしょ、昔から助手してたって言ってたし、カップリングも捗るよね」
俺の話題提供は数度の返信で終わってしまい。その後は延々と俺の話とちくわの話が展開されていた。これは……間違いなく俺に注目が集まっている。次回配信をするのが怖いな。
チャンネル登録数とか、リスナーの数というのは、応援してくれる人の数ではなく銃口の数。ネットの炎上をいくつも見てきた俺は、その言葉を全くその通りだと思っていた。
「ちくモブって……カプ厨うぜぇ、二次創作の概念リアルに持ってくんなよ」
「まあまあ、でも案外あの二人デキてたりすんのかな」
「そんなわけないだろちくわは俺ら飼い主が大事だからそういう事はしないはずだし、そもそもずっと応援してきてスパコメしてる俺を差し置いてよくわからん男になびくとか許せないよ」
「めっちゃ顔真っ赤にして言ってそう。ユニコーンきっしょ」
もうこのチャットに俺が入れる余地はなくなってしまった。こういうファンは絶対にいる訳で、やはりある程度の距離を保って配信をしなきゃいけないよな。
「てかねこまちゃんもじゃない? 一回しかコラボしてなかったけど、あの態度は完全に狙ってたでしょ」
「つまりモブはヤリチンって事? ちくわに別れるように伝えなきゃ」
「落ち着けよ、つーか何なんだよお前さっきから」
「まーちくわちゃんもねこまちゃんも女だし、イケメン出てきたら態度も変わるでしょ」
どうしよう。俺がヤリチンだったりちくわとねこまから行為を向けられているのでは? とか言われてる。
「まあ、なんにせよこれから先のちくわちゃんに注目って事だよな!」
「そーだな、あとモブ」
「モブはいいんじゃね? 撮れ高あるイベントは全部ちくわとコラボでやるみたいだし……あ、でもサラマンダーテイムはソロでやってる時だったな」
注目をなんとかちくわに向けようと頑張ったが、それもどうやら無理なようだった。俺は溜息をつき、スマホのホームボタンを押す。
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