赤の勇者は他人事~異世界転生させられた土地で奉り上げられても困る!~

@Subnook

第一章 かけだしの転生者

第1話 転生、なにそれ?

「そういうわけで、お前さんには異世界転生をしてもらうことになったんじゃが、なんか質問ある?」


「はい???」


目の前にいる白く長い髭を生やしたおじいさんがいきなり告げてきた。状況が見えない。

いきなりこの訳の分からない所にいて異世界転生??

では今の私はなんだ??


「あーやっぱり分からんよねぇ。」


「自然に心を読まないでくれます!?」


「説明するから少し静かにしてくれんかのぅ…」


おじいさんが気だるげに杖を取り出し、どこからともなく現れた雲に乗る。その瞬間光がおじいさんから出てきた。…あー…なんとなく分かってきたぞ…


「まずお前さんは死んだ。そしてこれから異世界転生をしてもらう。ついでにワシはお前さん達の世界で言う神様。ほれ、こんな感じじゃ。」


死。一体いつ頃、どのようにして死んだんだろうか。

「20年ほど前に老衰で、じゃな。満足して死んだだろうに魂が霞みもせずはっきりと見えおる。まだ何か未練があるのかの?」


「もうツッコミませんけど…未練、ですか。」


未練。やり残したこと。気にかかること。考えてみても浮かんでこない。本当にない。やってみたいことも、浮かんでこない。


「ほほーう、では、この異世界転生は『お前さんのやりたいことを見つけて、実行する』をテーマにしてみると良いじゃろう。きっと色の多い第2の生を歩めるぞ?」


「…出来るんですかね、私に。」


「諦めが早いのはお前さんの世界の悪い癖じゃなあ。まずやってみる、というのも面白いものじゃよ。」


「……分かりました。ひとまず頑張ってみますね。」


「うむ。では飛ばすのでな、頑張ってくるんじゃぞ~」


「えっ、もう!?ちょっと待―――」


ふよふよと浮いていた光の塊を包み込むように、更なる光が眩く輝く。消えた場所には何も残されていなかった。


「さてさて、ガチャガチャでチートでも決めてやるかの。」


そういって神様が振り向くと、3つのガチャガチャがあった。それぞれ、赤、青、黒い色をしている。


「………んん?そんなにくれてやって良いのか?………まあ、良いか。ガチャっとな。」


神様が一回ずつガチャガチャを回す。何に祈ることもなく、無造作に。出た能力を先程転生させた魂の情報に焼き付け、整えた。


「ふーむ…ま、せいぜい幸多い人生を送ると良いぞ…■■ ■■、いや、デリィ・ヴァーミリス。」


―――――――――――――――――――――――


「…っ、ここは…」


転生させられたと思しき部屋の中だろうか、それにしても何か儀式が行われているような部屋だ。人が無数に見えるほどいる。


「失礼!」


「ぅえ、ちょ、なにを…」


「この紋様…間違いない!勇者だ!巫女様はやってくださった!救世の勇者を召喚なさったぞおおおおおおおお!!」


近づいてきたと思ったら体を掴まれ、胸の辺りを見られ、いきなり巫女だの勇者だの…ん、勇者??誰が…??私が!?


「我が国すべての都市に伝令!!救世の勇者来る!!繰り返す!!救世の勇者来る!!伝え漏れの無いようにな!!私は巫女様の所へお連れする!!」


「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」


「え、あの、私は…一体…?」


「いきなりで申し訳ありませぬが、御同行願いたい。良いだろうか、勇者殿?」


「は、はぁ…」


なんだか凄いことになってない!?というかここどこ!?勇者って何!?整理をさせてぇぇぇぇぇぇ!!

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