第34話・魔王・サタン討伐
今、俺の目の前では俺の為に命懸けで魔王・サタンと戦ってるプレイヤーがいる。
俺は彼ら彼女らのことを一切知らない。
更に言えば今の状況がどうなっていて、俺は今どういう存在で?何を成し遂げたのかも分からない。
ただ、それでも、それでも、俺は、目の前で俺の為に命懸けで戦ってる仲間を見捨てて逃げるなんてことは出来なかった。
例え俺が知らなくたって、彼ら彼女らは俺の事を知っていて、俺の為に命懸けてんだ。
「じゃあ、俺も命懸けで頑張らないとな」
不思議と気力が湧いてくる。
普段の自分らしくない、そう思う。
でも、俺の心が、魂が、今ここで逃げたら後悔すると叫んでいる。
逃げるな、立ち向かえて叫んでる。
何故魔王・サタンと戦ってるのか?イトという少女が誰なのか?
全部、今、この戦いを終わらせてから、このプレイヤー達、否、俺の仲間に聞けばいい。
「うおおおおおおおおおおお」
俺は足に力を込めて地面を蹴りあげる。
軽く10メートル以上飛んだ。
手によく馴染む片手剣を握りしめて、魔王・サタンの角に向けて振り落とし、切り落とした。
「よくも、よくも、我の角をぉぉぉぉぉ」
馬鹿でかい叫び声が聞こえる。
この程度でビビる俺ではなかった。
「知るかよ、んなもん。もう一本の角を落としてやる」
魔王・サタンの頭を駆け、もう一本の角を切り落とす。
「ああああああ。我の我の角がぁぁぁぁぁ、絶対に許さん」
後ろから魔王・サタンが発動したであろう、火球が俺に襲い掛かってくる。
それらは全て仲間が水魔法で撃ち落としてくれた。
「ユウヤ~~~、やっちゃえええ」
「おう、当たり前だ」
声援が俺に力を与えてくれる。
「ユウヤ、俺のMPを受け取れ」
「私のMPも受け取って」
「俺のも受け取りやがれ」
「最後はあの技で決めるだろ、ユウヤ」
「行け~~~。ユウヤ、全てを終わらせろ」
「完全復活したお前の力を見せつけてやれ」
仲間たちの声援と共に体に力が湧き、剣に光が、否、MPが宿るのを感じる。
その時、知らないはずの技なのに、俺の口から言葉が自然と出た。
「魔殺零流片手剣・必殺奥義・終之型・終戦」
莫大な量のMPが一気に解放され、片手剣は全てを滅し、強制的に戦いを終わりへと導く終戦の剣となる。
俺は終戦の剣をただ、真っすぐに魔王・サタンの頭に突き刺した。
全ての戦いを終えた勇者が勇者の剣を次の勇者に託す為に岩に突き刺すかのように、静かに突き刺した。
「GAAAAAAAAAAAAAAAA
我が、我がこんなところで、こんな人間如き、我が~~~~~~~
我が・・・・・・わ、れ、が・・・」
ドサリ
10メートルもある魔王・サタンの体が地面に落ちる。
地震が起きたんじゃないかと錯覚するほどに地面が揺れた。
俺は魔王・サタンの頭の上にいたこともあり、体制を崩して地面に尻もちをついてしまった。
「全く、ユウヤは最後までユウヤだな」
仲間の一人が手を差し伸べてくれる。
「うるせぇ」
自然と言葉が出た。
体を起こして、辺りを見渡す。
山のような魔物の死体と何十人というプレイヤーの死体が転がっていた。
地面は激しい戦闘によって大きく劣化し、不毛な大地となっていた。
「一体、どれだけ激しい戦闘をしたんだ・・・」
「ユウヤ、やり遂げたな。苦節5年、閉じ込められた1万人のプレーヤーで今生き残ったのは千人程度だろう。
実に90%ものプレーヤーがこのデスゲームによって命を落とした。
でも、俺達は成し遂げたんだ。生き残ったんだ。これでようやく解放されるんだ」
・・・・・・・・・
あれ?
「なあ、今1000人って言ったか?」
「ああ。それがどうした?」
「元々のプレイヤーが1万人ってどういうことだ?」
「おいおい、何を言ってるだ。第2回イベントで全てのサーバーの人が合流して1万人になっただろ」
「全てのサーバ?ああ、海外サーバか?」
「いや、違うぞ。第二弾ベータテスターサーバと第三弾ベータテスターのサーバが合流して、1万人になったじゃないか」
「第二弾?第三弾?あれ?何でデスゲームってことは外に漏れてるんじゃ・・・」
「本当にどうしちまったんだ。ユウヤ。思考加速速度を常時1000倍まで引き上げてる上に、俺達は本社の指定したビルに集められてカプセル入ってたから、デスゲームになってるってことが世間に知られてるわけがないだろ」
嘘をついてるようには見えなかった。
「ハハハハハハハハハハハハハハハ」
乾いた笑いが出てしまう。
「おい、本当にどうしちまったんよ?ユウヤ。今は一緒に魔王・サタンを討伐したことを喜ぼうぜ」
ピコン
おめでとうございます!
数多の犠牲、数多の冒険、数多の出会い、数多の成長。
単行本でいえば30冊くらいは余裕で行きそうな戦いの末、貴方達は魔王・サタンの討伐に成功しました。
本来であれば、データも充分に集まっていますし、貴方達の記憶を消去して解放しようと考えていたのですが。
辞めました。
スポンサーの意向により、これより、1週目の全ての記憶と、最初のゲーム開始までのリアルの記憶を消去及び変更した上で、今現在生き残ってる人たちのみで2週目を開始します。
では、最高に楽しいデスゲーム・マジック・ワールド・ファンタジーを楽しんでください」
ピコン
エラーが発生しました。
エラーが発生しました。
エラーが発生しました。
もう既に記憶が消去されています。
上位者権限への検討の方を加速します。
検討の方を加速させた結果、記憶はしっかりと消去されているので問題がないと判断しました。
強制的に死に戻り地点の1分前に巻き戻します。
そして俺はさっきの森の中に戻っていた。
――――――――――――――――――――
面白いと思って頂けましたら嬉しい限りです。
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