第20話・自治ギルドとリンチ
「嫌だ。死にたくない。死にたくない」
拘束されてる一人が叫んだ。
文字通り必死に叫んだ。それはそうだ、生きるか死ぬかの状況だからな。
「黙れ。さっき人を殺しておいてよくそんなことが言えるな」
拘束をしてるプレイヤーの一人が、頭を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
「いいぞ。もっとやれ」
「そうだそうだ」
「そいつは屑野郎だ。犯罪者だ。何をしてもいいぞ」
「何なら殺せ。どうせ後3人、生贄がいるんだ」
「俺も殴らせろ」
過熱化してリンチが起きている。
このままだとこのプレイヤーが殺されかねない。
いやまあ、人を殺してるプレイヤーだし、一人殺したら後9人殺すだけなって、他のプレイヤーを殺しにかかる可能性があるし、今ここで殺すのは有りといえば有りではあるが・・・
この殺し方はよろしくない気がする。
過熱化した空気のままリンチという形で殺してしまうのは、次の争いに火種になりかねない。
今はアドレナリンドバドバ出てるだろうし、自分が優位な立ち位置にいるという、ある種のスタンフォード監獄実験と似たような状態に陥ってしまっている。
この勢いで人を殺してしまった場合、彼らはその罪の意識に耐えきれずに自ら死を選ぶか廃人になってしまう、ないし、吹っ切れてしまって条件2の達成の為に人を殺す、悪しきプレイヤーになってしまう可能性がある。
それは余りよろしくない、となると、ここは誰かが裁くのが良い。
形式に乗っ取って、4人の内3人を殺すプレイヤーがいる。
・・・正直、聖騎士であるリーナさんとかいれば、最高だったし、彼女に任せれそうだったが・・・いないんだよな。
どうするか?
どうするのが正解か?
いっそのこと何もしないでおくか、別に他人な訳だし、放置するのも有りといえば有りだ。
「カツ」
いきなり馬鹿でかい声が響いた。
声の方向に目を向けると、白色の道着を着た男性がいた。
短く赤色の髪、筋肉はムキムキ、見るからに熱血ですと激しく自己主張をしていた。
「俺は馬鹿だから詳しい話は分からん。
ただ、今の状況は良くないと思う。
そいつは悪人だ。悪人だが、しっかりとした形で裁くべきだ。
リンチという形で処刑というのはおかしい」
響く声でそう告げた。
その声を聞き、リンチを行ってた人が一瞬手を止める。
これはチャンスだ。
そして上手くいけば俺はこのデスゲームにおいて大きな権力を手に入れることが出来るかもしれない。
「俺も彼の意見に賛成だ。もしそいつらを裁くのであればしっかりとルールを今決めてから裁こうじゃないか。
ここはデスゲームとなった世界だ。
皆が早く脱出したい気持ちも分かるし、殺人を犯したコイツらが許せない気持ちも分かる。
でも、無理に他人を殺さなくても今みたいなイベントという形で脱出出来る可能性はあるし、もしかしたら時間経過で解放される可能性だってある。
そう考えれば、まだ何も罪を犯してない俺らがわざわざ殺人という大きな罪悪感を背負ってまで処刑を行う理由なんてないんじゃないか?
そうだろ?」
俺の言葉にリンチをしてた人たちが顔を見合わせて、確かにそうだなと納得の表情をしてくれる。
取り敢えず第一段階はクリアだ。
「じゃあ、この4人はどうするんだ」
一人が声をあげた。
誰だか分からないがナイスだ。
「よくぞ聞いてくれた。
そこでだ、皆、組織を作らないか。
組織といってもそんなに大層なものじゃない。
デスゲームとなってしまったこの世界において俺達で最低限守る必要のあるルールを定めでそれを守らせる組織だ。
名前はそうだな・・・取り敢えず仮の名前として自治ギルドと名乗っておこう。
自治ギルドで守らせるルールは詳しくは後々決めるが大きく分けて3つ。
1つ目・殺人ないしそれに準ずる犯罪を犯したプレイヤーの拘束。
なお、拘束したプレイヤーは今回のような一定以上のプレイヤーが確実に犠牲となる状況に置いて生贄として活用する。
2つ目・まだ、出てないが、この世界がマジック・ワールド・ファンタジーというゲームだ。生存率をあげる為にモンスターやマップ等の情報の交流をしていく。
3つ目・可能ならば全てのプレイヤーは自治ギルドに加盟を行い、パーティーを組む際には自治ギルドに報告を行う。
以上だ。どうだ?
良いアイデアだと思うが、反対意見はあるか?
そしてこの自治ギルドのルールに乗っ取って、殺人という大きな犯罪を犯したプレイヤー4人は武装を解除、ようは装備を全部剥がした上で拘束し、一人生贄を出し、残り3人はこの大会が終わった後に全プレイヤーで追跡を行い、拘束しようじゃないか」
ピコン
スキル【演説】level1を獲得しました。
お、スキルを獲得した。
どうやら俺の演説はスキルとして認められる程度には優れていたらしい。ありがたいことだ。
さて、俺のこの提案は無事に受け入れられるかな?
受け入れられたら、俺がしれっと幹部になって一番情報を得られる立場になってやる。
そうすれば後々非常に便利だしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます