第16話・最弱王決定戦・なお最弱王に選ばれれば処刑です


「なあ、相川、リーナさんに大剣を背中に持った金髪の大男を生贄にすることを勧めてくれないか?」

 リーナさんと話した感じだが、悪い人でもなさそうだし、今の所良い関係を築けていると思う。

 リーナさんが現在このゲームにおいて最強のステータスを持ち、職業も上位職業【聖騎士】っていう点も踏まえて仲良くして損はない。

 上手く付き合っていけば、条件1の脱出方法である魔王サタンの討伐に協力してくれるかもしれない。


 なればこそ、リーナさんが今ここで死ぬというのは絶対に避けなければならない。


「もしかしてそいつはプレイヤーをキルした男なのか?」


「いや、違うが、それに準ずる危険なプレイヤーだ。そいつは俺のチームにいたのだが、かくかくしかじかかくかくしかじかあってだな」

 軽く俺のチームで起こった出来事、そして俺がどうやって解決したのかを、少し大袈裟に伝える。

 0を1に伝えるのはバレるが、1を2に伝える行為は案外バレないものなんでな。

 相川としてもリーナさんに生きて欲しいだろうから、おそらくリーナさんに件の金髪で大柄な男が相当な悪であると伝えるだろう。


「なるほど。それは危険な人物だな・・・分かった。ありがとう。俺としてもリーナには絶対に生きて欲しいからな、伝えてみるよ」


「ああ。頼む相川。その代わり、何かあった時はリーナさんに俺の味方をしてくれよって伝えてくれよな」


「ハハハ、ちゃっかりしてるな。オッケー分かった。そうするよ」


 相川はチャットを打ち始めた。


 俺はそれを確認したら、現在どれだけのチームが残ってるのかモニター画面を見る。


 ほとんどのモニター画面には誰もおらず、辺りを見渡せばかなり多くのプレイヤーが控室にいた。


「どのチームも着々と決着がついてるみたいだな」

 俺は一人呟きながら、もう一度控室にいるメンバーを確認する。


 少し離れた所でざわざわと混乱のようなものが起きていた。


 何だ?何が起きてる?と、不思議に思いつつ、少し近づいて確認すると、さっきプレイヤー、否、人を殺害したプレイヤー2名が大勢のプレイヤー達に囲まれていた。


 なるほどと納得する。

 この控室は非暴力地帯であり、一切の戦闘行為が禁止されている。

 だから、誰も攻撃は出来ない。

 そう、攻撃が出来ないので、こうして大勢で囲んで圧をかける同時に顔を覚えているのだ。

 コイツは人を殺した危険人物だ。

 じゃんけん大会が終わったら10人殺害の条件2を達成させようとする可能性が非常に高い。

 今のうちに顔を覚えて可能ならばじゃんけん大会が終わって戻った瞬間に全員で協力して拘束ないし、【キル】をした方が良いんじゃないか?


 と。


 そうか。

 これはデスゲームなんだ。

 生きるか死ぬかがかかったデスゲームなんだ。

 俺は【死に戻り】というスキルを持ってるから、割と心に余裕があるが、俺以外のプレイヤーは全員一度死んだら終わりなんだ。

 それは、誰もがこんな危険な状態から抜け出したい、ログアウトしたい。

 それと同時に自分を殺す可能性のある危険な人物は身の安全の為にも排除しておきたい。

 条件2の達成のためには10人のキルが必要だ。

 たった10人じゃない、10人もキルをしなければならないんだ。誰かにプレイヤーをキルする場面を見られらたら最後、フレンドチャット等で情報が拡散されて全プレイヤーから危険な人物として排除されるだろう。

 まるで魔女狩りのように。

 といってもプレイヤーをキルしてる悪人だから、当然の報いといえば当然の報いだろうが。

 まあ、人にもよるが望んでプレイヤーをキルしようとは思わないだろう。帰りたいが為に仕方なくキルするのであろう。

 そう考えると、ああ。これは何というか、本当に質が悪いな。


 デスゲーム・・・ろくなもんじゃないな。


 ピコン

【30チーム全てのじゃんけんが終了しました。

 ただいまより、ドキドキワクワクじゃんけん大会の最弱王と最強王を決めるよ。

 敗者30人と勝者30人のじゃんけん大会。

 非常にドキドキ、ワクワクするね。

 さあ、控室にいる皆様、まずは敗者30人の、最弱王を決める大会からスタートするね。

 誰が負けて殺されるのか楽しみだね】


 かくして上部のモニター画面に30チームの中で負けた敗北者30人が映し出された。


 文字通り生死のかかったじゃんけん大会が始まった。

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