第9話・上位職業【聖騎士】


 待合スペースに転移をした。

 

 待合スペースは何となくの想像通りというべきか、キャラメイキングを行ってた場所と同じ草原に椅子やら机やらが数百以上バラバラに置かれているような場所だった。

 もちろん、待合スペースなんで俺以外のプレイヤーが大勢いて、Iちゃんの言葉通りならば492人もいるという計算になる。

 混乱とかは特に起きてなさそうで、皆心底楽しそうにこのゲームについての情報交換をしていた。


「よお。お前も職業系統スキルを獲らなかったくちか」

 狩り人って感じの服を着て背中には弓を背負っている少し悪い遊びを教えてくれる優しいお兄ちゃんって感じの人がいた。

 因みに髪の色は茶色だ。


「職業系統スキル?」


「ああ。知らないのかってそれはそうだよな。ステータスの所に職業ってのがあると思うのだが分かるか?」


「職業?確かにあったな。あ、もしかして職業系統スキルってのを選んでたらその職業を選べるってことか」


「おお。正解だ。まあ、このゲームをやるくらいだ。知識はあるだろうしな。職業系統スキル、ようは剣術を取っていたら、職業・見習い剣士になれる。火魔法を取っていたら見習い魔法使いになれるって感じだ」


「なるほど。勉強になります。ありがとうございます」


「いいってことよ。まあ、そんで職業を選択したらそれにあった装備が支給されるんだ。お前は装備が初期装備のまんま、つまり職業系統スキルを選択してないってことが分かった訳だ」


「なるほど」


「まあ、でも安心しろ。お前以外にも職業系統スキルを取ってない人はいるし、そんなに大した問題じゃないよ。最初少し遅れを取る程度だと思う」


 最初少し遅れを取る程度・・・デスゲームってのを考えたら、それって一発でデッドエンドの地獄じゃ・・・。

 あれ?これ俺は【死に戻り】あるけど、職業系統スキル選べてない人積んでね?


「うん?どうしたそんなに深刻な顔して、別にそこまで深く考えなくてもいいよ。そうだな、ここで会ったのも何かの縁だ。良かった色々と教えてあげよう」


「いいんですか。ありがとうございます」


「何、良いってことよ。ぶっちゃけ俺は情報を誰かに教えて喜ぶ姿を見るってのが大好きなんだ。所謂先輩風ロールプレイングって奴だ」

 これはかなりありがたいな。

 情報=武器。更に言えばデスゲームになるってのを考えれば情報の価値は更に跳ね上がるからな。


「まずはそうだな。自己紹介からするか。俺の名前は相川だ。気軽に相川と呼んでくれ。さん付けとかは要らないし、敬語とかも要らないぞ」


「分かった。相川、よろしく頼む。俺の名前はユウヤだ。こっちも気軽にユウヤと呼んでくれ」


「おお。よろしくなユウヤ。さて、じゃあ何を教えてあげようかな。まずはアイツを見ろ」

 相川が指を指した方を見る。

 そこには白く明らかに豪華な鎧と身に纏い背には大盾、腰には高そうな片手剣を下げている、聖騎士って言葉が似合いそうな金髪の女性がいた。

 何となく何処かで見たことあるような雰囲気を感じたが、おそらくなんかのゲームのキャラと似てるのかなと結論を出す。


「彼女の名前はリーナ。今現在だが唯一の上位職業【聖騎士】を持っている」

 

「上位職業【聖騎士】・・・明らかに強そうですね」


「強そうじゃないよ。多分一番強いよ。実は俺は彼女と元から知り合いでステータスを見せて貰ったんだが、なんとビックリ全てのステータスが50以上、魔力に至っては100以上もあったんだ」


「え?ステータスポイントの初期値って100じゃなかったの?」


「いや。会ってるぞ。初期値は100だ。俺も100だった。多分皆100だろう。ただ彼女はとある特殊なステ振りとスキル構成をした結果、上位職業【聖騎士】を授かり、そのボーナスで全ステータスに+50というチートみたいなことが起きたらしい」

 

「それはチートですね」


「だろだろ。いや~理不尽だよな。マジで羨ましいわ」

 聖騎士の女性リーナさんが相川の声に反応して近づいて来た。


「おいおい、お前がそれを言うなよ。相川」

 聖騎士の女性リーナさんが相川の頭を思いっきり掴む。

 そういえば知り合いって言ってたな。 


「コイツが迷惑をかけた」


「いや。大丈夫です。むしろ貴重な情報を教えて貰ってありがたかったくらいです」


「そうか。それなら良かった」


「リーナ何をするんだよ」


「何をするって、そうやってすぐに新人に絡む癖やめた方がいいぞ」


「絡んでんじゃない。教えてやってるんだ」


「でも一回、それで揉めたのを覚えてないのか」


「それはそれ、これはこれだ」


「まあ、別に彼は迷惑そうにしてないからいいけど」


「だろだろ、さて、すまんなユウヤ、余計な茶々を入れてしまって」


「あ。いや全然大丈夫ですよ」


「お詫びと言ったら何だが、俺の秘密も教えてやろう」


「秘密ですか?」


「ああ。そうだ。実はな俺は世界で初めて俊敏に極振りをしたことによって、俊敏のステータスが倍になってるんだ」

 ステータス倍、器用と同じだな。

 てことは、初期ステータスを世界で初めて極振りしたら倍になるってのは確定情報な感じがするな。


「それは凄いですね。おめでとうございます」


「おお、ありがとなって、まあ今更な情報かもな、流石に本サービス開始の時は修正されてそうだし。されてなかったとしてもかなりの倍率になりそうだ」


「ああ、確かにそうですね。今はβテストということで人も少ないですし、皆割と慎重にステ振りしてたでしょうからね」


「そうだな。まあ、秘密っていっても以上だ。他に話せることは、まあなくはないけど、正直つまらないものばっかりだ。流石にまだβテストすら始まってないからこんなもんだろ。

 後は、そうだな。あ、そうだフレンド登録でもするか?」


「え?もうフレンド登録出来るんですか?」


「ああ。出来るぞ。というわけで握手だ」

 言われるままに握手をする。


「フレンド登録」

 相川がそう言った瞬間に目の前にフレンド登録しますか。という画面が現れる。


「登録する」


 ピコン

 プレイヤー【相川】とフレンドになりました。


「これでフレンド登録完了だ。詳しい説明はAIロボに聞くなり、ガイドでも見てくれ」


「ありがとうございます」


「何、良いってことよ」


 かくして俺は初めてのフレンドを手に入れたのだった。

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