第8話・名前と情報収集


「名前もといユーザー名か・・・もしもデスゲームでないと知ってたならば、俺は無難にというかいつも通り、ユウヤという名前を使ってただろうな。何故ユウヤかといえば、俺の本名が悠斗だから、そっからユウだけ借りてそれだけだったら寂しいような気がしたからヤを足して、ユウヤだ。

 以上。終わり。

 何の意味もない、マジで適当な理由だ。

 ユウヤ、正直この名前が本名の人を探せば山ほどいそうだし、割とありふれた名前な気はする。というか小中高大と学年に最低一人はユウヤ君いたしな・・・

 となると、やっぱり今回もユウヤでいくか。

 デスゲームってのを考えてもユウヤという特に当たり障りのない感じの無難かつありふれてそうな名前を使うのは悪くない選択肢ではある。

 本名を少しもじってるとはいえ、これだけ本当の名前を突き止めるのも不可能に近いし。

 ユウヤ・・・割とありな気がするな。

 それに、この世界がVRMMOってのも大事だ。いきなりユウヤって呼びかけられても元の本名である悠斗と音的に似てるし、違和感なくすぐ反応が出来ると思う。これは結構大きな利点である気がする。

 あれ?考えれば考える程ユウヤでよくねって気がする。

 うん。下手に悩んで変な名前にしてもアレだ。よし、決めた。

 俺の名前はユウヤで行こう」

 

「本当にユウヤという名前で登録してよろしいでしょうか?」


「ああ。大丈夫だ。よろしく頼む」


「ユウヤで登録しました。これにてキャラメイキングが終了しました。お疲れ様でした。βテスト版サービス開始まで待合スペースで待機しますか?」


「待合スペース?なんじゃそれは?教えてくれIちゃん」


「待合スペースとは、キャラメイキングが終了した他のプレイヤーの方々がβテスト版サービス開始まで集う待機場所であります。

 尚、待合スペースでは一切の戦闘行為が禁止されており、何があろうとこのルールが破られることはありません」


「なるほどね。他のプレイヤーか。それでいて戦闘行為禁止ね。待合スペースに入った瞬間にデスゲーム開始ってのはないと判断して良さそうかな?じゃあIちゃんもう一つ質問だ。待合スペースには現在何人がいる」


「はい。待合スペースには現在492人のプレイヤー様がいらっしゃります」


「おお。思いの外いるな。492人、こんだけいたらログアウト出来ないことに気が付いてからのデスゲームってことが発覚してパニックになっててもおかしくないな。パニック状態の492人がいる待合スペースとか絶対に入りたくないって、いやでも待てよ?そういえばこの世界がデスゲームだって気が付いたの俺が世界で初めてだったよな。

 もしかしなくても案外皆気が付いていないんじゃね?

 というか、落ち着いて考えてみよう。これは世界で初めてのVRMMOゲームのβテスト版であり、日本もそうだが他国でも最低1000倍以上の倍率を潜り抜けた猛者のみが遊べる選ばれたゲームだ。

 そしてキャラメイキング時点ですら期待を裏切らない、いや期待を大きく超えるリアル感と自由度があった。

 こんな神ゲーからログアウトしたいと考える人がいるか?リアルでの都合も頭に思い浮かんだが、皆俺みたいにこのゲームに集中する為に諸々全部終わらせて最低でもサービス開始の今日は丸一日空けるくらいのことはするよな。というかするな。しない馬鹿はいないよな?

 もし仮にリアルで用事ある人がいればそっち優先するだろう。

 あれ?本気で誰もログアウトしないんじゃね?


 ・・・・・・・・・


 あれれ?


 もしかしなくてもこれ本気で俺以外この世界がデスゲームだと気が付いてない?


 もし仮にログアウト出来ないってことに気が付いた人はいても、何かしらのバクないしキャラメイキング途中だから、βテスト版のサービス開始がされてないからっていう何かしらの理由を考えて納得するんじゃね?

 というか普通そうなるよな。これ正直、俺みたいなラノベ脳&【死に戻り】というスキルを獲得して判断材料が揃ったみたいな状況でようやくデスゲームだと確信出来るレベルだよな?

 普通はログアウト出来ない=デスゲームという狂った方程式は出来上がらないもんな。なんかマジでそんな気がして来たな。

 となると、待合スペースで問題は起きてないと仮定をして、普通に待合スペースでは活発な意見交流でも行われてそうだな。

 デスゲームのルールは分からないが、敵ないし味方の情報は知ってれば知ってるほど良いに決まってる。

 デスゲームとなったらば警戒して自分のスキル構成とか有用な情報を他者に伝えるとかしないだろうが、まだ、普通のβテストと思ってる今なら行ける。多分人によって何もしなくても伝えてくれそうだ。

 おっと、これは素晴らしいのではないか、さて、楽しい楽しい情報収集の始まりだ。Iちゃん俺を待合スペースに送ってくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る