第2話・地獄の始まり
「うおおおおおおお。よっしゃー!当たった。当選した。嘘だろ。マジかよ。神かよ。うおおおおおおお。しゃああああああ。最高だぜ」
俺は柄にもなくパソコンの前で一人喜びの余り絶叫をしてしまった。
何故なら、VRMMOゲーム、マジック・ワールド・ファンタジーのβテストに当選したからだ。
倍率は驚異の3000倍以上とかいう、控えめに言って頭のおかしくなるくらいの倍率を潜り抜けて、俺は当選したんだ。
これを喜ばずにいられるかって話だ。
俺はゲームが好きだ。ライトノベルが好きだ。
所謂、典型的なオタクだ。
そんな俺が世界初のVRMMOゲームのβテストに当選したんだぞ。
嬉しすぎて嬉しすぎて頭のネジがぶっ飛んでしまいそうだ。
「ヤベエ、一生分の運を使い果たしたような気分だ。ヤバいな最高に楽しみだな。楽しみが過ぎるよ。うおおおおおって、やめよう。一旦落ち着こう。あんまりうるさくし過ぎて苦情来たら最悪だからな」
現在、大学に近い、安アパートに一人暮らししている身、下手に苦情入って退去とかなったら詰みというものだ。
「こういう時は深呼吸だ。ヒッヒッフー、ヒッヒッフーって、これラマーズ法やん。ハア、まあでも落ち着いた。さてと、どうやらゲーム機の方は1週間後には届くらしいし、それまでに大学のレポート全部片づけてゲームに集中出来るようにしますか。よし頑張ろう」
1週間後
「ようやく、ようやくこの日が来た。嗚呼、この日をどれだけ待ちわびたことか。この日の為に大学の課題は全部終わらせた。
電子脳波を利用した記憶操作による精神治療とかVRMMOが与えるうつ病へのアプローチ法とか、まあ見るからに面倒でクソ怠い論文を読んで、レジュメにして提出した。出席日数も足りてるから2カ月程度ならぶっちしても問題なく単位貰える。
家にはしっかりと青汁とカップラーメンとサプリメントを用意した。引きこもれる準備は完璧だ。ああ、本当に楽しみで仕方がない」
ピンポーン
聞きなれたインターホンだが、今日に限ってのみ神の祝福のように聞こえた。
俺は慌てて玄関へと向かい、荷物を受け取る。
もちろんその荷物は待望のVRMMOマジック・ワールド・ファンタジーをプレイするためのゲーム機だ。
狭い玄関ながらもなんとか運び込まれたそのゲーム機、否、筐体を見て俺は驚愕した。
まず、大きかった。
大きさは大体2メートルくらいのカプセルで、中はクッションのようになっており、今使ってるゲーミングチェアの何倍も柔らかかった。
これなら体を痛めることなく何時間でもゲームが出来そうであった。
見た感じは一時期駅などに置いてあった酸素カプセルのような感じで、入ったらコールドスリープでも出来そうな感じすらした。
有難いことに、配送から設置等まで全部業者の人がやってくれたので、特に何事もなく俺の部屋にゲーム筐体が置かれた。
「サイトに大きさやら詳細説明やら書いてあった気がしたが、実部で見ると相当だな。いやはやいやはやですね。ああ、でもこれから俺の初めてのVRMMO体験が始まるのか。ワクワクしかしねえな。
取り敢えず付属の説明書を読むか。流石に読まないのは不味いしな」
業者さんから読んでくださいと渡された説明書を読む。
色々と長たらしく書いてあったが内容を短くまとめると、充分な臨床実験は行いましたが、また試作段階であるので、何か起こっても当社は責任を取らないが、何かあれば全力で対応をして、人命を第一とするというのと、ゲームなんで調整がめちゃくちゃ入ると思うけど許してね。バクとかもあるかもだけど許してねって感じだ。
一応、βテストに応募する際に規約としてサインを求められた内容とほとんど同じだった。
後はこのゲーム筐体の使用電力とか注意点とかだが、そこまで使用電力も大きくなかったし、火気厳禁とか水気厳禁とかそれはそうだよなってレベルのものだったしここも問題はなしだ。
「さてと、βテスト開始は後1時間後か。どうやらそれまでにキャラメイキングの方は出来るらしいし、1時間かけて最高のキャラメイキングでもして待ってるか」
一人結論を出してから、俺はゲーム筐体の中に体を入れるのだった。
これが地獄の始まりだとは知らずに、地獄の中に自ら体を入れてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます