第8話
「決行はそうだね…明日にしようか。」
ユウさんは銃を二本部屋から取り出し、覚悟を決めたような表情で、ラインのある方へと運んで行く。
僕は決行が思ったより早いことに驚きつつも、彼女の方へと着いて行った。
計画なんてろくに立てていないままだが、こんなにすぐ動いて大丈夫なのだろうか。
無計画に行くと問題が一つ発生する。
それは僕の母を殺すだけでなく、彼女の親も手にかけるから起きる。
つまり、僕たちは一つ目の事件を起こしてから二つ目の事件を起こすまでに捕まってはいけないのだ。
となると必要なのは隠蔽工作のはずなのだが、その工程をすっ飛ばすかのように彼女は明日決行と言ったのだ。
途中で捕まってしまうと契約不履行になる。
いや、二人の間に結んだのは同盟だから同盟不履行というべきか?
そんな事はどっちでも良いのだが。
「残る証拠はどう消したら良いんですか?」
僕は聞いた。
「いやいいよ、私がなんとかする」
その後いくらこのことを聞いても、彼女ははぐらかすようにこの答えしか返してこなかった。
荷物が置いてある方へと戻ると、突然睡魔が襲ってきた。
そういえば全く眠っていない事に気がつく。
彼女とコンビニで会ったのが深夜だった。
今は昼前。
家でも寝ていなかったのだから一日などゆうに過ぎる期間、僕は夢の世界に入り込んでいなかったのだ。
これだけ起き続けた事は初めてだ。
普段は割とすぐに眠る。
起きていると、母を見るたび、恨みと哀れみと愛と憎しみが混ざった言い表しようのない感情が僕の心の中に現れてくるから。
だから僕はすぐに寝る。
つまり、夜更かしは苦手なのだ。
当然、僕の脳のカラータイマーはさっきから鳴り響いていたのだろうが、銃があったことの衝撃で一時停止していたらしい。
そんなことを考えているうちに、どんどん頭が働かなくなっていく。
「あの……寝ても良いですか?」
彼女は少し考えるそぶりを見せたが、最終的には首を縦に振った。
「良いよ。
でも決行は日付が変わってすぐの深夜だから、そこまでには起きといてね」
僕もそう誓い、眠りについた。
しかし僕たちの体に蓄積されていた疲労というのは、思ったより根深いものであったらしく、結局僕だけでなく彼女も日付が変わった直後どころか日がすでに登り始める頃まで眠ってしまっていた。
僕が起きた瞬間、共鳴するように彼女も目を覚ます。
彼女ははっと時計を見ると、落胆した表情を見せ、こう言った。
「もう計画は失敗。
私は母を殺せない」
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