第3話

「一応言っておくけど、キミが思っている世界の壊し方じゃあないかもしれない。

核兵器を使うとか、地球を爆発させるとか」

 人との考えが一から十まで一致することなんてないからね、と今度は茎わかめを開きながら、軽い調子で彼女は言った。

 僕は、彼女の考えにはないこの二つのようなことをすると思っていたので、少し困惑しつつ、話を聞き続ける。


「例えば……そうだね、キミはアメリカってどう思う?」

 ……

 余りに脈略のない質問に、思わず少し硬直してしまった。

 アメリカ?

 なんの関係があるのかさっぱりだが、僕は率直な印象を述べる。

「え、まあ、世界を牛耳る経済大国だなと」

 彼女はテストで悪い点数を取った時のような渋い顔で、首を傾げた。

「ん〜、ちょっと欲しかった答えじゃあ無いかな

てかキミ、牛耳るって、アメリカのこと悪者みたいに思ってるの?」

 彼女は僕を見ながら純白の歯を見せた。


 いつの間に買ったのか、彼女はコーラを開ける。

 まあさっきも言ったけど、人の意見って一致するもんじゃないからね。

 と呟きながら、彼女が求めていた答えを、右手で頬杖をつきながら彼女自身でつらつら語りだした。

「アメリカって間違いなく大きな国じゃん、経済的にも、領土的にも。

これはたぶん世界中の誰に聞いても一致する答えでしょ。

敵国に聞いたら一致しないって?

そんなのは例外ってことにしといて。

まあでも、アメリカが無くったって私達が終わる、死ぬことなんて無いよね?」

「まあ、それはそうですね」

「そう、ざっくり言うならそれは、アメリカは私達の背景。

別にそれが無くなっても、無くなったことを知るだけで、結局は対岸の火事。

日常は変わらない。

せいぜい友達との会話とか、ニュースに出てくるくらいかな。

世界って上手くできていて、無くなったら、何かが補うように出来てる。

例えばそう、政治家が死んでも、その政治家の思想を教育されてきた息子が世襲するみたいに。

私達の世界を構成しているのはあくまでも周りの関わりがある人で、それ以外はただそこにあるだけの存在。

通りすがりの人だってそう、別に彼らが私達の人生に影響を与えることなんて無い。

自分と何か関係を持つこともない。

つまり世界というのは、意外と狭い。


 ……小難しい話だ。

 小説と言うよりは、説明文だろう。

 論理と文学みたいな。

 実際に地球を破壊し尽くそうとすることは、非常に難しい。

 例えそれはどんな武器と兵器を使おうとも。

 それは、国家であろうと変わらない。

 ましてや、僕たちは個人。

 難易度が桁違いに変わって来ることなんて自明の理だ。


 しかし、彼女の考えに関しては、倫理的なものを無視すれば不可能というわけではない。

「つまり、あなたの言いたいことは……」

 彼女は自信のある顔で言う。

「そう。

私にとっての世界を壊すは、

それだけだよ」

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