第3話 朝の彼女

凛先輩の…"連絡先"


姉からそう言われて立ち止まった足。その時点で俺VS姉の勝負はすでに負けていたのかもしれない。ただ、少なくとも今姉に背中を見せているこの瞬間までは勝っていた。


「あれ〜、どうしたのかなぁ?」


「……。」


でも欲しい!!もっと凛先輩と話したい!!

誰だって男ならそう思うだろ。俺は姉に弄られる覚悟を決め、振り返った。


「なぁんてうそぴょん〜!!!あげないよん〜!!!」


やはり俺がバカだった。


「…………このっ」


「ふふっ、簡単に上げるような女に見えるのか?この私が」


「……見える」


「なっ……!こう見えてちゃんとしてます!!!…まぁでも普通の男の子で少し安心したよ」


「……今度こそ寝る」


「はーい、おやすみ〜」






_____________。



「おーい、起きろー。朝だぞ〜?」


「……ん。姉ちゃん…?」


翌日、起きた視界の先には姉が腕組みをしてこちらを覗き込んでいた。時計を見るがまだ起きる時間には少し早かった。


「なんだよ……まだ寝れるじゃん」


「ダメ、起きなさい!今日から私と登校するんだから……まぁ正確には私達か…」


寝起きの耳には少しばかりしんどい声量。そんな姉に勝てるわけもなく渋々起き、顔を洗いに行く。


「あら智哉、随分早起きね」


「この人に起こされたから」


「今日から智哉と一緒に登校するから!」


「そうなの?分かったわ」


家族と一緒に朝食を食べ、玄関を出る。途中、姉がニヤニヤしているのが分かり気味が悪くなった。


「顔、キモいよ」


「さいってぇ」


電車を待っている間、ふと疑問に思った事を聞いてみた。


「なんで姉ちゃんと一緒に学校行かなきゃ行けないの?高校生にもなって恥ずかしいよ」


「ん〜?いいから黙って付いてきなさい?もう少しで分かるから」


「…?」


電車に揺られ間隔の狭い2駅を過ぎた時。昨日の出来事を思い出す。まだ鮮明に残っていた。


"また、明日ね智哉くん!"


「何ニヤニヤしてんの、キモいよ?」


「うっせぇな」


凛先輩が降りた駅に電車が着き、扉が開く。

比較的、乗り降りが少ないのですぐに分かった。"彼女"の存在を。


「おはよ〜!美希!!」


「おっはよ!凛!」


凛先輩だった。高めのポニーテールに可愛いキーホルダーを付けたリュックを持った彼女がそこにはいた。


「あっ!智哉くんもおはよ!!」


「お、おはようございます…」


「声ちっさ…ぷっ」


姉の顔がムカつくほど笑っていた。今日無理やり起こされたのはこれのためだったのか。


「隣失礼します!よっと…」


そして、当の本人の凛先輩だがなんと俺の隣に座ってきたのだ。朝から限界がすぎる。何も俺の隣に座らなくても。


「あ、智哉くん寝癖見っけ。ぴょんっ」


「あ……」


何だよぴょんって!可愛すぎだろ!


指先ではねさせ俺の寝癖で遊ぶ凛先輩。途中、俺を挟み姉と何やら会話をしていたが正直それどころではなかった。もしかして、毎日これが続くのか。そんな事を考え、電車の到着を彼女の横で待っていた。


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