第2話 彼女の表情
高校に入学した初日の帰りの電車。何故か俺の横には美人の先輩、佐々木凛先輩が座っていた。というのも時間を少し前に遡り…
_____
「ほらね?一緒でしょ?」
見せられた凛先輩の定期は確かに同じ駅を示していた。これは運命なのだろうか。いや、運命だと信じたい。なんてオカルトみたいな事を思いつつ。
「本当だ…。」
「よぉーし、帰ろ〜!」
言われるがまま凛先輩の後ろを半歩…いや1歩半離れて付いていく。
「あ、ごめん。歩くの速かったね」
なんて言われて歩幅を合わせられ隣に彼女が来る度、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。こっちはわざとずらしてるのに…。
とまぁそんな事があり今に戻る。
電車に揺られる2人。智哉は緊張で何も話せないでいるとそんな様子にきづいたのか凛は急に笑う。
「ふふっ」
「ど、どうかしました?」
「まだ表情固いなぁって思ってさ?」
「そりゃ…凛先輩と一緒なんで…」
凛先輩が通った後、すれ違う男性はほぼ彼女の事を見る。今もなお、電車内にいる人だってこっちをチラチラ見てくる。そんな女性と一緒にいるのだ。柔らかくなるはずない。
「それ、どういう意味かなぁ?ん〜?」
そう言って彼女の顔が自分の顔に近づき…
「あっいや!悪い意味じゃなくて…っ!」
咄嗟に顔を背ける。
「とても…き、綺麗なので…その…緊張するというか…。」
「へっ……あ、ありがと…」
顔を背けつつも横目で見るという高等技術で自分の欲に忠実に従い彼女の顔を見る。そんな凛先輩の頬は少し赤かった気がした。正直夕陽のせいなのかもしれない。どっちにしろ俯く凛先輩も綺麗だった。
電車が止まり扉が開く。
「わ…私ここだから!じゃ、また明日ね智哉くん!」
「あっ、はい!」
駆け足で電車を降りて行く凛先輩に手を振る。そして、ぽっかり空いた隣の席。
……ん?
「また…明日…。」
家に着いても離れなかった。終始うわの空で夕飯を食べ、風呂を済ましリビングでぼーっとしていると
「よう!可愛い弟よ、学校初日はどうだった!?」
「耳元で言うなよ、鼓膜壊れる。」
そんな夜だと言うのに大音量を耳にかますのは見ての通り俺の姉、
「普通だったよ別に」
「ほう……。私の"親友"にちょっかいをかけておいて普通の初日と言うか…」
待て待て待て。なんだその初日は。
「ちょっかい?」
「あんた今日凛と会ったらしいじゃん?」
もう姉の耳には届いていたらしい。恐らく情報提供者は"あの人"しかいないだろう。
「誰だよ」
「凛から聞いたから無理だぞそれは?」
くそっ!やっぱり凛先輩か!言っちゃうあたりも本当に可愛いけど!!
「……。」
「嘘の次は黙秘権か」
「別に何にも無いよ」
「まだ何にも聞いてないけど?」
「………………寝る!」
こんな奴に構ってる場合じゃない!ボロが出る前にさっさと逃げなければ。
「待ちなさい私の可愛い弟よ、話がある。聞きなさい?」
「俺は無いし!話も聞かない!」
「ふ〜ん、もし私が凛の連絡先を智哉にあげると言ったらどうする?」
………………!。
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