2つ上のお姉さんにとても好かれる話
白鹿ベ透ル
第1話 未知の領域にいる者たち
「ふぁ〜」
4月6日の午後。俺、
この春、俺は高校生としてこれからを生きる。
1年C組、1年という短い時間ではあるが通う教室を少し眺める。中に入り黒板に書かれた座席へ座ると前にいる人から声をかけられた。
「お…来たきた。1年よろしくな智哉!」
「まさか同じクラスになるとはな、よろしく貴樹」
「なぁなぁ、うちのクラス可愛い子多くね」
「さぁ〜?どうだろう」
こんな調子の良い発言もたまにあったり。
既にクラスの皆は教室のあちこちでグループを作り友達活動を始めていた。そんな盛り上がりを見せる教室に担任らしき女性が入ってきて、
「はぁ〜い、席に着いてね!」
ショートカットの
「これから色々渡すから確認するように」
そう言って多くの書類を渡されたあとこれからについて話され高校初日は幕を閉じた。
「帰るか〜」
「んー少し学校見てくから先帰っていいよ」
「熱心な高校生だなおい!」
「…かもね」
「ほんじゃあ、また明日〜」
「うん」
貴樹の背中を見送り、夕陽に照らされた校内を歩く。
職員室、化学室、音楽室、美術室、家庭科室、体育館なんて2つあった。
「あれ、ここ3年棟か…」
気づけば1年の俺にはまだ知らない未知の領域に来ていた。2年も先輩が普段過ごす場所。この"2年"という文字が俺の行動を慎重にさせる。
順番に覗きをすること3つ目。事件は起こった。3年C組。そこには一人、女性がいた。
黒く靡かせた綺麗なロングヘアに小さな顔は余裕で俺にこの言葉を言わせた。
「可愛い……。」
「へ……?」
その瞬間その人はこちらを向き、たったの数秒だが目が合う。途端、俺はまずいと思ったのかその場から逃げ始める。
やばい。まずい。そう思ったのは束の間。
「ねぇ君!!!」
「うえっ…!?」
恐る恐る振り返るとこちらに何か合図を送る女性。
「落としたよ!!!これ!!!!」
持っていたのは俺の定期だった。焦りと恐怖、その他諸々の感情がひしめく中俺は近づく。
「あ、ありがとうございます…」
「どういたしまして、えぇーっと…タチバナトモヤくん」
俺の定期に書いてあった名前で丁寧に渡してくる。受け取ったらすぐに去ろう。そう考えていた。だがしかし
「橘…もしかして君、美希の弟くん?」
「へ…?」
「
「いえ、合ってます…」
まさか姉の友達だとは!!!!!!
「やっぱそうだよね!顔もどことなく似てるような気したんだぁ〜!」
「あはは…」
「あっ、ごめんごめん。私は
そう言って笑う凛先輩にまた惚れた。
「弟が今年から入ってくるっては聞いていたけどまさか初日から会えるとはね!」
こっちも一目惚れした先輩がまさか姉の友達だとは思ってもみなかったよ。
「これからよろしくね、智哉くん!」
「あ…こ、こちらこそよろしくお願いします。えーっと……佐々木先輩…。」
「佐々木なんて堅苦しいよー、凛って呼んで?」
「へっ…それはさすがに…」
「へへっ、うそうそ。好きに呼んで」
「それじゃあ…り、凛先輩で。」
照れながらも彼女を凛先輩と呼ぶ今俺の顔はとても見れたもんじゃないだろう。
「じゃあ俺はこれで帰るんで…」
「あ、智哉くん?」
「はい?」
「定期見た時思ったけど帰りの電車、同じだから一緒に帰ろっか?」
……。
えええええぇぇぇぇぇえええええええ!?
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