夢への音色
神無月
第1話 春 出会いの日
「あー、まだ春だって言うのに今日も暑いね」
「んね、音楽室にも早くクーラーつかないんかなー、ゆな、部長でしょう?何とかしてよー」
「無理、無理、そんな予算どこにあるるんだって話!」
「そっかー。あっ、話変わるけどさー今日から新入生入部するんでしょー、楽しみだよね、」
「そうだね、ゆなのパートに1年生入ってくれるか不安だわー。というか、そろそろ来るんじゃない?」
「やば、もうそんな時間か、早くしなきゃ。」
いつものように話をし終わった私たちはそれぞれの席で1年生を迎える準備をする。
ガラガラ
1年生が次々と入ってくる。紺のセーラー服に身を包んだ1年生がどこか緊張した面持ちだ。懐かしいな、私達もあんな感じだったのだろうか。
「1年生は窓側の空いてる席に座ってください。では、これから組織会を始めます。今日の流れは幹部の自己紹介と楽器紹介&パート決め、部活についての話、最後に顧問の先生からのお話です。
じゃあとりあえず幹部の自己紹介から始めようかな。まずは私から、吹奏楽部部長兼トランペットパートリーダー 伊月 由奈です。部活のこととかでよく分からないこととかあったら遠慮なく聞いてください。どうぞよろしくお願いします。」
拍手がまばらに起こる。はぁ、緊張するな、何回やっても前に立つのはなれない。私の自己紹介が終わるとすっと前に出たのは関西弁で話すポニーテールの快活な女の子とショートカットの気の強そうな女の子だ。
「じゃあ次はうちやんな、吹奏楽部副部長 如月雪奈です。パートはサックスです。部長の補佐係ですね。気軽に話しかけて欲しいな。」
「吹奏楽部副部長兼コンマスの笠木あんなです。
吹奏楽部はみんなでひとつのものを作らないといけないから協力しながら頑張って行けたらいいなって思います。」
「とりあえず、以上3名が幹部です。みんな困ったことがあったら遠慮なく頼ってね。じゃあ時間もないし楽器紹介行くか、今からパートリーダーが説明していくから、みんなどの楽器がいいか決めてね。じゃあ、フルートパートから―――──」
各パートのパートリーダーがそれぞれの担当楽器について説明していく。1年生はみんな真剣に話を聞いていた。
「じゃあ、今から配る紙に希望の楽器書いてください。あとは経験者の子はやってた楽器も書いてください。その紙を見て暫定的にパートを決めて約1ヶ月後くらいにテストします。───
みんな書き終わったみたいだね。じゃあ部活について話そうかな。副部長の雪奈お願い。」
「はーい、じゃあうちから部活についてはなすな。まずは活動日は基本的には日曜日以外って思ってもらえたらええで。練習時間は平日は放課後から20時まで約3時間くらいかな、休日は午前練は9時から12時まで一日練は9時から16時くらいまでかな、あとのことはパートリーダとかに聞いて見てな。」
「ありがとう。そろそろ先生来るかな、先生くるまで一旦休憩取りましょう。」
途端に教室は騒がしくなる。今年の新入部員は26名2年生が28名3年生が20名だから合計74名だ。若干不安になる。仕切っていけるのだろうか。
ガラガラ
物思いにふけていると顧問が入ってきた。慌てて挨拶をする。
「起立、お願いします。」
「お願いします。」
「はい、お願いします。1年生の皆さん初めまして、顧問の山寺です。よろしくお願いします。今日は私から皆さんにひとつ大事なお話があります。それは今年の全日本吹奏楽コンクールについてです。まぁ、単刀直入に言うと皆さんがどこを目指すかという話ですね。本気でやるのかどうか、とても重要な話だと思っています。――」
そっか、コンクールか。早いなぁ。もうこれが最後のコンクールなんて。
「1年生が入部してすぐに決めるのは少し早いかもしれませんが、動くのならば早めに動くに越したことありませんからね。なので今ここで時間を取りますから部長と副部長中心に決めてください。あとは、部長にお任せしますね。」
「わかりました。」
そう言って私と副部長は立ち上がり黒板の前に出てきた。
「うーん、本気でやるかどうか、多数決で決めようと思うのですが、その前に私の意見を行ってもいいですか、私は本気でやりたい。やるなら後悔はしたくない。私は小学校から楽器を始めました。吹奏楽部って楽そうだけど案外辛くて、あとは、人間関係もきつくて、何回も辞めたいなって思いました。でも、それでも楽器が好きだから続けてきた。ここまで頑張って来た成果を結果として残したい。私はそう思う。でも、それを押し付けるのはなんか違うと思うから、あくまでも私の意見としては本気がいいと思ってます。では、多数決を取りましょうか。どちらかに必ず手をあげてください。本気で上を目指したい人。」
全員が手を挙げた。みんな真剣な眼差しでこちらを見ている。
「わかりました。先生本気で上を目指したいです。」
「それでいいんですね。皆さんがいいのならそうしましょう。では、今日は解散で」
「起立、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
夢への音色 神無月 @yui919
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