第11話「悲劇の始まり」

「授業疲れたね〜絢香」

「ほんとにね〜」


 私がドアの方を見ると、そこには翔人が立っていた。


「あ、翔人!」

「今日、弓道見に来ない?」


 私が絢香の方を向くと、絢香は行って来い!と言わんばかりの表情をしていた。私も翔人に、オッケーサインを送った。


__________________


 〜弓道場〜


「あれ、まだ誰もいないの?」


 そう言うと、翔人は準備をしながら、そうみたいだね、と言った。


「彼女になってから見せる初の、矢を打ってるところ見せて欲しいなあ」


 私がそう要求すると、


「その代わり、将来は結婚してね」


 と言われたが頭の整理が追いつかず、口づけをされ、矢を打った。


「今日は一発目にしては調子いいな。恋果、どうだった?」


 私はずっと混乱したままだったので


「へ?」


 と声が裏返ってしまった。翔人はそんな私を見て笑った。


「冗談だよ。」

「じょ、冗談だよね笑」


 まだ、私の心はドキドキしている。本気で好きになっちゃいけないのに、本気で好きになってしまいそうだ。でも、意識をしなければ、、、なんとかなるはず。弓道場からもうひとり入ってきた。




「あら、こんにちは。仮入期間ならもう終わってるけど、、、」

「迷惑だったらすみません。岩村くんの事見学してちゃだめですか?」


「まあ、顧問がいると絶対ダメなんだけど、あ、弓道だから集中できなくなっちゃうからね。

 だけど、今日は顧問が来ない日だから、大丈夫だよ。その代わり、部員の心乱れるようなことはしないでね。」


「わかりました。ありがとうございます。」


 私は、翔人にグッドサインと頑張れサインを同時に送った。

 


 翔人がいきなりこっちを向いてきたので、すこしびっくりした。


「ちょっと休憩。」


 そう言って、外に出ていった。


 すると突然、先輩がこう言った。


「翔人くん、ホント真面目な子よね。THE・優等生って感じ。翔人くん、顔も頭もいいじゃない?先輩だけど、翔人くんのこと、後輩としてめっちゃ慕ってんのよねえ。」



 先輩はそう一気に言った。慕うって言ってたけどそれはあくまでも、『後輩として』だもんね。でも、私も別に正式ではないから、なにも先輩に言う資格なんて、ないのだけど。


「翔人くんのこと、狙っちゃおうかなあ、、なんて笑」

「やめてください、、」

「何本気な顔してんの笑冗談だって笑」


「川上先輩、そういう冗談笑えないっす。」


 休憩から戻ってきた翔人がそう言った。


「え、何二人して本気になってんの?まるで、俺たち付き合ってるんでと言わんばかりに。」



 すると翔人が、あの、と続けて言った。



「まるで、じゃなくて本気で付き合ってますから、俺ら。」


「ふっ笑そうやって言えるのは、今のうちよ?ほら、岩村。練習に戻りなさい。」


「、、はい。わかりました。」


 先輩と翔人は、各自練習に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る