第10話 糸口
今日も兵士団の訓練に混ざっている。
昨日の
一度集中して
目の前には濃い人形をしたエレの塊がある。手には剣のようなものが握られている。
「戦闘開始」
キシカの声が響いた。
俺はゆっくりと目を開く。確かにエレの流れがぼんやりとみえている。
しばらく睨み合っていたが、エレが足に集まった。
次の瞬間相手は俺に切り掛かってくる。
行動にエレが先行しているのであれば避けるのが簡単になりそうだ。
俺は手に持っている木刀でうけとめる。
俺のエレは目の前の相手よりも明らかに薄い。
そのまま押し返すとエレは見えなくなった。
昨日の夜から何回も挑戦した結果わかったことは集中している間しか使えないということ。
別のこと例えば、剣を振ることや躱わすことなど。今の俺にはそんな些細なことも同時にできない。
もう一度エレを可視化するために距離を稼ぎたいところ。だが相手はそれを許さない。
一歩下がって距離を取ろうとしてもすぐに間合いに踏み込んでくる。
こちらは距離を取ろうと逃げ腰になるので防戦一方だ。一撃一撃にしっかりと体重が乗っている。
今回の相手ならエレがなくても勝てると思う。しかし、それでは意味がない。
勝ちにこだわる
俺は相手の攻撃を交わして足を払った。
俺に準備をする時間を与えないように前のめりになっていたこともあり、相手は対処ができず体勢を崩した。
相手が再び向かってくるまでの一瞬と勇気。俺が欲しかったものは揃った。
俺は再び目を瞑る。
これまでエレを使えなかった分培ってきた剣筋の分析と予測。そして、師匠に直接教えてもらった
これらがあれば大丈夫。
相手は予想通り一直線に、最短に距離を詰めてきていたのを捉えて視界は暗転した。
次の瞬間浮かぶ黄色い人型。エレの流れが手に取るようにわかる。
右上腕部と右足にたまるエレ。そしてこれまでの俺の動きを真似するような戦い方。
暗闇の中動員できる全てを使って導き出された次の手は剣の大振りからの前蹴り。
実際まぶたの裏に浮かぶ人型のエレは手に持った剣を振り下ろした。
迷わず剣を受け止める。
すかさず飛んでくる前蹴りに関してはバレていれば隙を生むだけ。
片足になった
「試合終了」
キシカの声と共に大きな歓声が包む。ゆっくりと目を開ける。
周りで試合の結末を見届けた兵士達が盛り上がっていた。
鍛錬場を照らす日光が眩しかった。
「何か掴んだみたいね」
鍛錬場で今日の成長を噛み締めているとキシカが声をかけてきた。
日はとっくに沈んでいるのに身体からはまだ熱気が収まらなかった。
「やっとな」
「じゃあ明日はトーナメントでもしよっかなぁ」
キシカはそう言い残していなくなった。
明日の訓練で絶対に身につけて見せる。俺は素振りを始めた。何かしないと落ち着かなかった。
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