第21話 二度目の再会

俺は、今週末の土日にその子に会うために地元へ帰ろうと新幹線の切符を購入した。

別にその子の許可がなければ会いに行っちゃいけないなんて決まりはないんだ、と俺は最終的に考えついての行動だった。

以前のやり取りでその子の勤務地は知っていたので、俺はその子の仕事終わりを見計らって店の近くで待っていようと考えた。

だって、それなら確実に会える。

接客業をしていたその子は、おそらく土日のどちらかは確実に出勤しているはずだし、何時終わりかまではわからなくても夕方くらいからずっと待ってればいい。

そうだ、東京のお土産も買っていこう。

俺がわざわざ会いに行ったらびっくりするだろうな。

少しでも俺の気持ち伝わるといいな。

俺は、そんなことを考えながら週末に備え準備をした。


週末。

俺は、土曜日早朝に新幹線に乗り、1時間程で地元へ帰ってきた。

そんなに多くない荷物と一緒にちょっとした東京の土産を片手に持ち、俺はその子が働くショッピングモールへと足を運んだ。

駅から徒歩15分程離れているそこは、さすが田舎――車でくる利用客が多く、駐車場もだだ広い。

ショッピングモールへ着くと、賑やかな装飾店や服屋を横目にその子が働く店の近くまで足早で移動した。

仕事中のところへ顔を出すのはさすがに迷惑だと思ったから、その店の近くのベンチに腰掛け、遠目でどんなヒトが入退店しているかを確認できるぐらいのところに陣取った。


仕事終わりのその子にどんな風に声掛けようか?

”お疲れさま”がいいかな?

その後は、”黙って来ちゃってごめん"がいいかな?

"会いたくて来ちゃった"なんて言ったらキモがられちゃいそうだから、仕事でたまたまこっちに来たってことにしよう。

それで"このあと何か予定ある? なきゃご飯でもどう?"がいいよな?

あまりに早く着きすぎてしまった為、俺はその子にどのように話して自然と納得してもらえるかのシミュレーションに夢中になった。


夕方5時頃。

遠目でその子が「じゃあ先に失礼します」と言いながら、店の奥へと引っ込む姿が確認できた。

俺はそれに合わせてベンチから腰を上げ、少しだけ店の前に近づく。

それから10分程経っただろうか。


「お疲れさま」

俺は、私服になったその子に声をかけた。


「えっ? 小林くん?」


「うん。ちょっと仕事でこっち来ててね。びっくりさせようと思って、黙って来ちゃった」


「そうだったんだ~! 急に話しかけられたからほんとびっくりしちゃったよ」


「うん、ごめんね」

俺は、少し笑いながらわざとらしく頭を下げた。


「――せっかく小林くん来てくれたことだし、ご飯でも行こっか?」


「あっうん。そのつもりでいたけど、この後大丈夫だった?」


「うん、大丈夫。私もね、ちょうど小林くんに話したいことあったから――」


「えっ――?」


「じゃあ、行こ」と手こそ引っ張ってくれなかったものの、彼女は先導しショッピングモールを出た。

俺はそれに付いていく形でその子の後ろを歩いた。

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