第20話 不信感

・・・。

俺はどこか彼女への不信感をその数カ月間で少しずつ蓄えていたのだと、当時の自分を振り返ると思う。

彼女が本当に仕事が忙しくてメールが減っているのだと、俺自身がだんだんと信じられなくなっていたのだと思う。

なんとなくだけれどどこか避けられているような、距離を置かれているような気がしていた。


その煮え切らない状況が、当時の自分にとってはあまりに辛いことだった。

まるで出口の見えないトンネルを延々と歩かされるようで、俺はある時にそれに耐えられなくなった。

中身のないメールのやり取りに始終する毎日では、俺は結局妥協、諦めを選んだことになると思った。

それは当時の自分からすると”逃げている”と等しかった。

"その子を自分の彼女にしたい"という欲求が叶いそうにないからと、その子が俺に与える”友達"という役割に俺自身が甘んじるのは逃げ以外の何にでもなかった。


そんな日々を過ごしていく中、俺は次第に自問自答が増えていった。

お前の決意は、お前の誓いは、お前の後悔は、そんなもんだったのか?

そんなに好きじゃない彼氏から彼女を奪い、救ってやるんじゃなかったのか?


これから起きることは、その繰り返しの中での出来事だ。

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