第8話 自殺未遂

しかしそんな生活も長くは続かなかった。

俺は、大学4年時にほとんど学校へ行かなかったせいで単位が足らず卒業できなくなり、そのせいで親から仕送りを止められ、家賃や留年した学費や生活費諸々を全て自分で出さないとならなくなった。

ようするに、それができなければ退学――最悪は死、だった。

今になって思うと、親も俺の駄目さ加減には今まで目を瞑ってくれていただけで本当は目に余っていたのだと思う。

本来なら大学を卒業していて当然の年齢であるし、バイトなどで自分の生活費くらいは稼いでいてもおかしくないのだ。

それらを一切俺はしてこず、それでいて本業である学業ですら疎かにしていたのだ。

親は、時には厳しくするのも必要だろうと一張一弛の考えでそうしたのだと今なら理解できる。

しかし俺は、そんな親の真意を一切汲み取らず、「そんなに死んでほしいなら死んでやる!」とか「生まれてこなきゃよかった」と親に暴言を吐いた。

ほんとうにみっともなかった。


でも人間そんな簡単に死ねるわけなかった。

俺はそんな状況になってもなお、働きたくない、現実が怖いと生活費を切り詰め、地べたを這うような生活を続けた。

時には一日柿の種1袋で過ごすこともあった。

しかし、毎月の家賃が結局一番の支出で、そんな生活もすぐに破綻を迎えた。

もうやっていけないとわかった俺はある日、半分ジョークで自殺を試みた。

親からも必要とされない、友達もいない、社会からも必要とされない、だからといって頑張りたくもない、頑張れる気力もない。


そんな俺にたった一つできることがあるとすれば自殺しかないと、その時の俺は短絡的に考えたのだ。

それは、ある意味で俺を必要としない社会や家族や大学の周りの連中の奴らに対しての復讐心がそうさせたのも大きかった。

俺は、手頃なヒモと手頃な台になりそうなものをちょうどよく見つけてきて、ヒモをたまたま家にあったロフトに昇るための木の梯子へ結び、もう片方でネットで調べたやり方で輪っかを作り、そこに首を通した。

さっき見つけた台になりそうなものをこれまた半分ジョークでセッティングして、俺はそこに立ってみた。

普段見慣れないちょっと高い位置から自分の狭い部屋を眺めた瞬間、漫画みたいな量の涙が溢れてきた。


その涙と一緒に今まで溜め込んでいた鬱屈も流れ落ちたのだと思う。

俺は、自殺をしようと試みた時に、何度目かわからないがいろんなものから逃げていたことを後悔した。

友達づくり――そして高校生の時に好きだった彼女のこと。

あの時ああしてれば、こんな馬鹿げたことも半分ジョークでしてみたりすることもなかったんじゃないかと――

あまりの自分の滑稽さと幼稚さに涙を流しながら俺は笑った。

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