第7話 挫折
だめだめな自分。
欠点しかない自分。
就職活動が始まり、それまでずっと逃げていた現実が次々と自分に襲いかかった。
面接でも喋れない、まともにディスカッションもできない、他人とのコミュニケーションもとれない。
俺は、就活でうまく行かない度に自己否定を繰り返し、"何をしても上手くいくはずがない"と、最終的に就活もできなくなり、その罪悪感から部屋に引きこもるようになった。
大学へも行かず、就活もせず、朝から晩まで眠り、夜になってから今日一日何にもしなかった絶望感と焦燥感に駆り立てられ、数十分だけ就活サイトなどを眺めるなどして無意味な達成感を味わい、そしてまた眠った。
そんな生活を半年以上続けていたある日だった。
俺は風呂から出た時に立ちくらみを起こし、そのまま気絶した。
どのくらい気絶状態だったのかは覚えていないが、覚醒した時に全身が乾いていたのでそこそこの時間は経っていたのだと思う。
俺はさすがにまずいと判断し、次の日病院に行って診察を受けたら、医者から栄養失調とうつ病だと言われた。
再発する可能性があるからと入院を勧められたが、お金がなかったので抗うつ薬と栄養剤をいくらか処方してもらうに留めた。
俺は、医者から診断結果を言い伝えられ、自分が相当精神的に参っているのをその時改めて認識した。
今思うと、その頃の俺は自分を騙し続けることができなくなっていたのだと思う。
今まで何となく生きて何となくやれてきただけで、ほんとうはただの無能だったということを自分自身誤魔化せなくなっていたのだと思う。
初めて飲んだ抗うつ薬は、飲めばハッピーになれるかと思ったがそうではなかった。
思考がボヤけるような感覚で常に睡魔に襲われるような感覚だった。
俺は抗うつ薬を朝と晩に1錠ずつ、栄養剤を朝昼晩2錠ずつ飲んだ。
薬を飲むと、"現実"がボヤけて幾分気持ちが落ち着いた。
薬を飲めば全てが良くなるものだと思っていたが、こんなのただの現実逃避の延長でしかなかった。
思考がポジティブになったり、明るい人間になるわけではない。
ただ、薬が効いている間だけ苦しみが少し和らぐに過ぎない。
俺はそのことに気づくと、薬がなくなった後に待ち受ける"現実"がただただ恐怖でしかなかった。
その恐怖も打ち消そうと、俺は薬に依存していった。
これまでもずっといろんなものから逃げ、それによって今こんなことになっていることに気づいてもなお、俺はさらに逃げ続けた。
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