第6話 就活
しかし、大学3年の冬――就活の季節が俺にもやってきた。
就活は、社会的な視点に立ち自分を客観視し、自分の価値を社会でどのように活かせるのかを自己分析することが求められる。
学生までの間はずっと自分のものさしだけで物事の価値を決めていたのが、初めて他者の視点で視た判断基準で自分の価値決めを行わなければならない。
社会的な視点で自分を振り返った時、自分の価値は何なのか?
出てきたのは数々の欠点だった。
友達もいない、もちろん彼女もいない、授業はサボるわ、バイトもしない。
それだけならまだしも、そのだめな自分を捻じ曲がった理屈で自己正当化し、全く改善しようともしない。
社会性、誠実さ、素直さ、人並みの経験の豊富さ――どれを取っても全てマイナスだった。
俺は数々の選考から落ち、自分自身の無価値さをただただ痛感した。
俺以外の就活生は皆等しく友達がいる。
就活の相談だったり、ゼミの相談だったり、バイトの話だったり、くだらない話だったり。
みんな当たり前に友達としていることが俺には一切できないーーそれは明らかに欠如でありマイナスだった。
客観的に見てもそんな人物は社会的に必要とされないだろう。
俺はその事実を自分でも理解できたので、何とか誤魔化して乗り切ろうと就活で内定を貰うために自分とは正反対の嘘の自分を演じ続けた。
時には「親友と呼べる人は何人いますか?」という質問が面接で出てきたこともあったが、俺は本当は一人もいないのに「3人くらいですかね~?」と答えた。
きっと無理やり笑おうとして顔を引き攣らせていたと思う。
嘘を言う度に、友達も、社会的価値も、何にもない自分を直視するようでズキズキと心が痛んだ。
俺は、この歳になって初めて自分自身のダメ人間さ・クズさを理解したのだった。
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