第4話 浪人

俺はその後高校を無事卒業した。

高校3年間は気づいたらオタクで始まりオタクで終わっていた。

しかし、オタクのしすぎで受験に失敗していた為、浪人生活が同時にスタートとなった。

親から「あんたは絶対家にいたら勉強しないんだから」と無理やり予備校に通わされた。

その当時の俺は恩知らずだったので、「めんどくせー」と有り難みを感じずに予備校に通うことにした。

さすがに勉強しないとなと思っていたので、サボることなく予備校に通った。

しかし、そんなものは長く続くこともなく、夏休みくらいからサボることが多くなった。

大義名分は"こんな勉強役立たない"だった。

そして、夏休みが終わるくらいには予備校に一切行かなくなっていた。

それで何をしていたかというと、昔買ったFFシリーズとドラゴンクエストに毎日心血を注いでいた。

オタク(ギャルゲ)によって受験を失敗していたので、ギャルゲをやらないのは俺なりのけじめだった。

FFは隠しボスといわれているボスを軒並み倒し、FF史上最高HPと言われているヤズマットというモンスターを倒し、達成感を得たりもした。

また、アニメも勉強そっちのけで観ていて、お昼に放映される世界名作劇場アニメ「ペリーヌ物語」を観るのが毎日の楽しみだった。

母親も昔そのアニメが好きだったらしく一緒に観て過ごしたりもした。

今考えても、母親はだいぶ放任主義であまり子どもに強制をしない人だった。

というより、俺が将来とか大人になったらどういう人物になりたいか等の夢や目標に無頓着すぎて、強制しても反感を買うだけだとわかっていたのかもしれない。

そう思えてしまう程、当時の俺はバカでアホでクズで怠惰だった。

浪人生は社会的に見ても何にも属していない浮いた存在である。

受験勉強をし、1年後に大学へ入学するのを担保として1年間何にも属さないことを許される。

本来なら必死こいて勉強しなきゃいけない身なのに、俺は半年もそれが続かずに自堕落な毎日を送った。


しかし冬、いわゆる受験シーズンが到来した。

俺は結局まともな勉強もしてこなかったのでそこそこの大学に入れればいいやって程度に考えていた。

3校くらい受験を申し込んで、試験を受けて、結果を待った。

結果は皆様のご期待通り、惨敗だった。

――と、ここまで読んできた読者の皆様ならそう思うし、そう願っていることだろう。

しかし、なぜか俺は予備校の先生に呼び出されて、「小林くん、君はすごい結果を残してくれたから是非どんな勉強をしてきたのか等、インタビューをさせてくれ」と依頼をされた。

それはいわゆる予備校独自で出している新聞みたいなものだった。

何人がどういう大学に合格したのか等が詳細に書かれていて、好成績を残したものがインタビューを受けて、その話した内容が記事になるというものだった。

俺は"半年以上予備校に一切行ってない人も対象なのかよ"と心の中で思ったが、皮肉的に面白いと感じ、インタビューを受けることに同意した。

そして、予備校で学んだことは一切言わず、自分が必要だと思った勉強を厳選し、自学自習する大切さを説いた。

今考えても本当にクソガキだったなと思う。

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