第5話 お散歩デビュー?
日々の羞恥プレイに耐えながら自分で動けるようになる日を心待ちにして赤ちゃん生活を送っていたある日、産後体調が思わしくなかったリステリアさんが元気になったので御祝いをするようです。
「城下に大きな行商市が立つそうよ」
城下町かぁどんなんだろう。
「騎士のあの人誘って外出してきたら?」
「えー! ムリムリ! あたしじゃ釣り合わないもの~」
うむ、どこの世界でも恋話は鉄板ですね。 リーゼがリステリアさんの付き添いで部屋には私の世話をする若い女性達しかいません。
上司の眼もないこともあり、彼女達は私を囲んで言いたい放題ですねー。
「でも、あんまり良くない噂が流れてるわよね」
うむ、赤ちゃんだと皆さん気が緩むのか情報提供満載ですね。
「あー、あれでしょ。 昔、宰相様の婚約者孕ませたってやつ」
何かすごい話になってきた! 興味津々で侍女達を見上げているとそのうちの一人が私の首もとをくすぐる。
「もしかして宰相閣下が独身なのってそのせい?」
「あんた癒してあげなよ~」
「ほらほらシオル様のミルクの時間ですよ」
キャッキャと盛り上がる侍女達の女子会は、いつの間に開いたのか入り口で仁王立ちするリーゼさんの声でおひらきになりました。
「シオル様、おしめが汚れた時は教えてください」
リーゼさんが抱き上げた私のお尻を触って苦笑いを浮かべている。
「あぅー(すいません)」
おしりが汚れた時と、お腹が空いたとき泣くのが今私に出来る仕事とはいえ、出来ませんと言って良いですか!?
早く首よ座れー。
産まれてから約三ヶ月、だいぶ頭は自分の意思で上げられるようになりました。
「明日はいよいよ、シオル様の生誕祭ですよ。 リステリア様の体調が優れず延び延びになっていましたけど」
リーゼはそう言うと、リステリアさんの部屋へ向かって歩いていきます。
私の授乳は粘り勝ちでリステリアさんと言うことになりました。
王公貴族は、乳母に授乳や世話をさせるのが普通らしいけど、無理です! ごめんなさい。
「シオル様の御披露目ですから、国中で御祝いですよ」
国中で御祝い……。
ずっしりと重いです。 この三ヶ月で、自分の立場が判明しました。
レイナス王国第一王子、しかも王位継承権第一位。
しがない一般庶民だった私になんつう重責を! 国一つが将来的に自分の手に任されるとか今から気が重い。
今のレイナス王国はなんの取り柄もない弱小国であることと、国王のアルトバールさんが争い事を好まないため、戦争とかに巻き込まれる心配は無いようです。
だけど、周囲の大国は今も領土をめぐり争いが絶えないとのこと。
太平洋戦争以降、戦争も銃刀法も法律で禁止されている日本で暮らしてきた私には実感としてわきません。
将来的に巻き込まれる可能性もあるけれど、とりあえず大きくなろう、うん。
「リステリア様、シオル様をお連れしました」
そうこうしている間にリステリアさんの部屋に通されると、今日はベッドから降りて、簡素なドレス姿のリステリアさんが出迎えてくれる。
「シオルお腹すいたでしょう、お母様の所においで」
優しい笑顔で手を伸ばすリステリアさんに私も手を伸ばした。
「あぅ! んきゃ(おはようございます! 調子良さそうで良かったです)」
「シオルは今日も元気ねぇ。 今日は一緒にお散歩へ行きましょうか?」
お散歩ですか、楽しみです。
産まれてから自力移動が出来ないのでもっぱらリステリアさんの部屋と子供部屋の往復で飽きてました。
「お天気もいいようですし、くれぐれもご無理はなさらないで下さいね」
リーゼさんのお許しも出たようなので、お散歩デビューです。
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