The Third Day
立て続けに事件が起きて次の日。
私は心底疲れ切っていた。
そんな日に限って相川さんにまたしても呼ばれた。
「よう、安城・・・・・・疲れてるな」
「はい・・・・・・。して、今日は何です?」
「大丈夫か?」
「・・・・・・はい」
「ん、無理しないようにな。それで今回なんだが、また例の学校に行ってくれ」
「―――――はい?」
「実はだな、簡単に言うと昨日捕まえたはずの稲容疑者が居なくなっていた。そして捜索の結果、田口容疑者と同じ場所で殺られていた」
「・・・・・・疲れました」
「そうか。じゃぁ、頑張ってくれ」
「人の話聴いてました?まぁ、やりますけど。それで、今回は?」
「あぁ。容疑者は1人増えて秋山、田島、田河、そして安達だ」
「・・・・・・なるほど。もう一回言ってもらっていいですか?」
「マジで疲れてるな。容疑者は1人増えて秋山、田島、田河、そして安達だ」
「分かり・・・・・・ました」
「死亡推定時刻は午後11時から翌日午前3時。ダイイングメッセージは『ピース・スタンド』だ」
「何で毎度犯人の名前直接書かないんですか・・・・・・。大体、『平和の設立』とか意味わかりませんて」
「さりげない不満を吐露するな」
「分かりました〜行ってきます」
「頼むぞ〜」
私はそのまま警視庁を後にして例の学校へ向かいました。
「――――というわけで、皆さん先日同様事情聴取をお願いしていいですか?」
「分かりました」
「では、秋山さんからお願いしていいですか?」
「・・・・・・勿論です」
何ですか今の間は?
「えっと、昨日の、夜。何処に居ましたか?」
「俺は昨日友人とともに電話で会話を」
「い、何時頃ですか?」
「えっと・・・・・・9時から12時位ですね。その後寝ました」
「ありがとうございます。ちなみに、その電話相手は?」
「旧友です。電話番号はここに」
掛けると、たしかに電話をしたようでした。
次は田島ですね。
「昨日の夜、何処に居ましたか?」
「私は・・・・・・。家で勉強してました」
「それを証明できる人は居ますか?」
「ラインのテレビ電話繋ぎながらやってたんで、それが証拠かな」
「何時頃ですか?」
「11時から1時位です」
「ちなみにその人の連絡先とかは・・・・・・」
「これです」
携帯を見せてきて、その電話番号にかけてみるとアリバイは確かにありました。
次は田河ですね。
「昨日の夜、何処に居ましたか?」
「俺はゲームしてました」
「それを証明できる人は?」
「残念ながら誰も」
「何時頃やってましたか?」
「あれは確か・・・・・・。9時から2時くらいかな?」
「ありがとうございます」
確かに田河はアリバイが無いようですね。
次に安達ですね。
「昨日の夜、何処に居ましたか?」
「家で寝てました」
「証明できる人は?」
「家族、です」
なるほど。
安達が一番アリバイがなかったようですね。
正直、一番怪しいのは安達と田河なんです。
そして、秋山は昨日、稲がやったトリックをやるとは考えにくいですし、会話もしているそうなんです。
田島は勉強の証拠もある。
田河か安達か。
私は現場に向かうことにしました。
現場には鑑識が数人検証しており、特に変わった点は無いと言っていました。
現場にも手がかりなしですか。
あとはダイイングメッセージの『ピース・スタンド』を解くしか無いんですね。
平和の・・・・・・設立。
―――――そういうことでしたか。
◆
「安城、大丈夫か?」
「・・・・・・えぇ。犯人は分かりました。そこでお願いがあります」
「何だ?」
「それはですね―――――」
「・・・・・・分かった」
私はそのまま屋上に登り、西の方角を確認すると、下を見下ろしました。
「丁度、現場の方角と一致しますね」
確認をした後、私は容疑者全員を呼び出しました。
「それでは、皆さん。お集まりですね?」
「はい」
「今回の犯行はダイイングメッセージが鍵です」
「どういう事ですか?」
「『ピース・スタンド』。この意味が分かりますか?」
「平和建設?」
「普通はそうなりますよね。ですが、それを少しずつ意味合いをずらすんです。そうすると、初日の福田さん同様、犯人が浮かび上がってくるんです」
「ピース・・・・・・平和、安らぎ、それから・・・・・・」
相川さんが1人で頑張ってるのは無視しますか。
「そうすると、『安らぎの達成』、とか『安らぎの建設』とかそういう意味になりますよね。その前者、『安らぎの達成』の中に犯人が居ます。そうです。安達さん。あなたですよね?」
「お、俺ですか?」
「えぇ。今回はこれといった証拠はありません」
「だったら・・・・・・」
「が、1つだけ言えることがあります」
「え?」
「何、実は私が現場をたまたま見ていたんですよ」
勿論、私は昨日疲れて寝てたのでそんなことはあり得ないんです。
ですが、これでおそらく・・・・・・。
「それは絶対に無い」
やはり。
かかりましたね。
「何故ですか?私は見たんですよ?何だったら警察に証言できるくらい目に焼き付いてますし」
「絶対に嘘だ」
「それを断言できるのは何故ですか?私はあの光景を焼き付けてるんですよ?」
「あの土砂降りの中、ビルの上に居たってのか!?」
「・・・・・・私、何処で殺害されたって言った覚えはありませんけど・・・・・・」
「い、いや。聴いてたんだよ」
「何処でですか?」
「お前とあの刑事が話してるところをだよ」
「別に私と相川さんは現場の話をしていたわけでは無いんですけど・・・・・・」
「な、何!?」
「世間話を少ししてました。お恥ずかしながら最近寝不足なもので。うっかり犯人をハメてしまう悪い癖が出てきてしまったようで」
「わ、悪い癖だとぉ!?」
「えぇ。昔の悪い癖ですね。偶に悪いと思いながらやってしまうんですよ。それに、まだ事件現場が何処なんて私達警察も分かってなかったんですよ。ありがとうございます。探す手間が省けました」
「こ、こうなったら――――!!!」
「お、おい!!!」
上に残った人たちが止めるのも虚しく、安達はフェンスを乗り越えて下に飛び降りようとました。
自殺をする気でしょうか?
「止めなさい。あなたは飛び降りたほうが分が悪くなりますよ?」
「そんなことはないね。高さは15メートルほど。十分着地できる」
「それを分の悪い賭けというのです」
「フッ。俺なら出来る」
そう言うと私の忠告を他所に安達は飛び降りました。
「愚かな・・・・・・」
私はそう呟きつつ下を見下ろすと、セーフティーエアクッションに着地して逃げようとしているところを取り押さえられている安達が垣間見えました。
「これで解決ですかね」
「大分強引だったな」
「仕方ないじゃないですか。あと、安達さんをしっかりと監視しといて下さい」
「その心は?」
「前回までの前兆として犯人の人が殺されるんです。ですから」
「分かった。警戒しておこう」
そして私は階段を使って地上まで行くと、連行されていく安達を見送り、容疑者達を解散させました。
空は昨日の夜降った土砂降りの雲が流れており、時折雲間から光が差し込んでいました。
まるで今まで起きた事件の終焉を告げるように。
≪The Third Day was Finishing, And To The Next Story...≫
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